世間はもうずぐヴァレンタインだと浮足立つ中そんなの関係ないといったように今も河川敷で夢中になってボールを追いかける天馬
私が剣城くんにあげないの?と聞くが何を?と聞き返してしまう始末であった。

「いや、だからチョコレートよ!」

「チョコレート?なんで?」

「なんでってもうすぐヴァレンタインでしょ?」

「ヴァレンタイン…あぁ…」

そっかヴァレンタインかぁ…と考え込む天馬を見て私は溜息を零した。

「で、剣城くんにはあげないの?」

「うーん…剣城、他の子からたくさん貰いそうだし俺は…」

いいよと言おうとしたが葵はものすごい勢いでこちらに近づけてきたから思わず後ずさりしてしまった。

「だめっ!!」

「え、なんで…?」

「なんでって付き合ってるんでしょ!?」

「声が大きいよ葵!!」

慌てて葵の口を塞ごうとする天馬の腕を掴み取り
葵は天馬を落ち着かせ自分も落ち着こうと深呼吸をした。

「と、とにかく付き合ってるんだったらヴァレンタインにチョコレートくらい渡すでしょ?
それとも天馬はいいの?
剣城くんが他の子からチョコ渡されても」

「だ、だって、葵もあげるでしょ?チョコ…」

「あのねー」

マネージャーとして部員全員にチョコレートを渡すとは言ったが剣城くんが他の子から渡されるチョコはそんな義理のようなものではなく本命が多いということを天馬に伝えると天馬は何と言っていいのか分からなくなり言葉に詰まっていた。

「あ…うぅ…それは…」

「ね、イヤでしょ?」

「う、うん…」

ようやく、ヴァレンタインというイベントンの重大性に気づいた幼馴染に私は呆れるしかなかった。

「で、どうするの天馬?」

「チョコ…渡したいけど…」

「けど?」

「剣城、甘いもの苦手だから…どうしよう…」

「ふふ、そこは私に任せてよ!」

「え?」

これでも女の子よ私、と明るく笑った葵に腕をひかれ河川敷を後にした。


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