何気ない幸せ


ふわふわ揺れるススキが河川敷に溢れていた
本格的な秋が目前だな、なんて思って歩いていたら前から松風が歩いて来るのが分かった

「あ!剣城!」

「……松風」

「お兄さんのお見舞いの帰り?」

「あぁ」

「そっか!
俺、今から特訓するんだけど
剣城もやらない?」

脇にサッカーボールを抱え笑顔で俺を誘ってきた松風を可愛いなんて思う俺はどうかしているかもしれない

「…いいぜ」

「本当!!?」

「あぁ」

「やったぁ!!」

こんなことでお前が喜ぶならいくらでも付き合うさ

「で、何をするんだ?
またドリブルか?」

「うん!
あとシュートも!!」

「分かった」

化身を出せるようになったとはいえ完璧に自分のものにするには時間もかかる

「よしこい!!」

「よーし!
今日こそ抜いてみせる!!」

「ふん!
お前に俺が抜けるかよ」

「負けるもんかっ!!」

気づけば陽は落ちて辺りは仄(ほの)暗くなり時間を確認したがまだ18:00前だった
時間はそんなに問題ないが暗くなってきたので帰ろるか?と松風に告げた

「あぁ…
もう暗くなってきてる…」

「どうする続けるか?」

「うーん…
暗くなると秋ねぇが心配するからそろそろ帰るよ
今日はありがとう剣城!」

「別に…」

いそいそと帰宅の準備を済ませる松風を横目で見て
自ら帰りを促したはずなのに松風を帰したくないという感情が剣城を支配しだした

「なぁ…松風」

「んー何?つる…」

気付いたら俺は松風を抱きしめていた
松風は暖かくて太陽の匂いがした

「つ、剣城っ!?」

「悪い…もう少しだけ…」

「…うん
ぁ!剣城」

「な、なんだ…?」

「俺んちに泊まらない?」

「はぁ?」

突然の誘いに間抜けな声が出てしまい
松風から離れた

「だから!泊まりに来なよ!!」

「この流れでなんでそうなる…」

「俺も剣城と一緒にいたい…
けどもう暗いし秋ねぇも心配するから…ね?」

俺よりも少し背の低い松風は自然と上目遣いになり首をかしげ俺に問いかけてきた。
断る理由もないから誘いを受けた。

「あぁ、いいぜ」

「えへへ」

本当に嬉しそうに笑う松風をみて幸せな気持ちでいっぱいになった

いつものように一緒にサッカーをして
いつものように一緒に帰って
いつものように一緒に……


いつまでも何気ない幸せな日々が続けばいい
end


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