怪我人には優しく
手を怪我した
まぁ、それはザックリと…
美術の時間にデッサンで使用する鉛筆をカッターで削っていたのだが
誰だかわからない生徒が刃を出したままでカッターを机の上に放置し
俺はそのカッターに気付かず机に手を置き体重をかけてしまい俺の右手は血塗れになった
案の定、美術室にいたクラスメイトと先生の悲鳴に怒声と大騒ぎだった…
そして、俺の手は包帯でぐるぐる巻きにされてしまった
多少の痛みはあったが授業に支障はなくお昼休みを迎えたのだが
「剣城、お弁当とお箸返して」
「黙って食え」
「はぁ…」
そう剣城にお弁当とお箸を取り上げられたのだ
しかも剣城にそのお弁当を食べさせられている俺…
「愛されてるねー天馬」
「愛されてるっていうか…もうこれは一種の嫌がらせにしか思えないよ」
「あはは、まぁそれだけ想われてるってことだよ」
この友人、西園信助は俺たちのやり取りを面白そうに眺めるだけで一向に助けてはくれないのだ
「もぉ!剣城、怪我したって言ったってそこまで痛くないから!
お箸だって持てないことはないから!」
「だから?」
「だからお弁当も普通に食べられるから!!か・え・せ・し・て!」
「…………」
「な、なに…うぐっ!むっ!!
ちょ、ちょっと!無理やり卵焼き突っ込まないでよ!!」
剣城にギロリと睨まれてしまい何も言い返せなくなって固まっていたら甘くてふわふわの卵焼きを勢いよく口のなかに突っ込まれた
「いいから食えっ」
「むぐぅっ」
「あはは、天馬ってば変な顔-」
「もぉ信助!笑わないでよ!
剣城も恥ずかしいからやめてよね!!自分で食べるからっ」「あ!おいっ」
剣城の手の中にある秋ねぇお手製のお弁当を奪い取り
お箸も取ろうと掴んだら痛みが襲ってきた
「いたっ…」
「ったく!やっぱり痛いんじゃねぇか!」
「へ、平気だよ!!痛くないし!」
「………」
べしっ
「ーッ!!!!!?
イッタァァァッ!!!!何すんだよ剣城!!怪我してるのに叩くとか信じられない!!最低!鬼畜!」
「わかったわかった
いいから大人しく食わさられてろ」
「う゛っ……」
これ以上なにを言っても無駄なのだと思い奪い取ったお弁当を剣城に渡した
それからニヤニヤして楽しそうな信助に俺たちのやり取りを見られ
恥ずかしすぎて何があったとかほとんど覚えていない
「怪我が治るまで続けるからな」
「良かったね天馬!」
「……………」
ぜんっぜん良くない!!!
もう二度と怪我なんかするもんかっ!!!!
心の中で叫んだ声は手の痛みに飲み込まれた―
end
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