黒猫の通り道


昔、兄さんから黒猫の話を聞いたことがある


京介、知ってる?
黒猫が目の前を通ると不幸が訪れるんだって…
なんだか黒猫は可哀想だね

どうして可哀想なの?

だって人が勝手に植え付けた悪いイメージだけで意味嫌われているんだよ…
黒猫は何も悪くないのにね…


その時の兄さんはとても悲しい顔をしていて俺は何もに言えなくなってしまった―




「るぎ…
つーるーぎー!」

「………まつか、ぜ?」

「やっと起きた!
部活行こう!」

「…もう放課後か」

「授業サボって寝てないでちゃんと勉強しなよ」

「ふん、お前とは頭のできが違うんだよ」

「な、!剣城ひどぃっ!!」

食いかかってくる松風を宥めながらサッカー棟に向かった。
するとどこから迷い込んできたのか一匹の黒猫が俺達の前を通りすぎた

「黒猫……」

あぁ、なんてタイミングの悪い
あんな夢を見たあとに黒猫が目の前を通るなんて…

「あ!黒猫だぁ!
ねぇ、剣城みてみて可愛いぃぃ」

「あ…あぁ…
そうだな…」

「…剣城?」

「な、なんだ!?」

うつむいた俺の顔にぐっと松風の顔が近付いて少し驚き後退りをしてしまった

「どうかした?
あ、もしかして猫が嫌い…?」

「いや…
むしろ好きなほうだが、ちょっとな…」

「……黒猫が目の前を通ると不幸が訪れる」

「!!!!?」

「だっけ…?」

あっけらかんとした表情で発せられた言葉に俺は焦った
まさか松風の口から出るとは思っていなかったから

「もしかして、それを気にしてるの?
剣城らしくないなぁ」

あははと無邪気に笑う松風に俺は
そうだな、としか返せなかった

昔から黒猫っぽいと言われ続けた俺はやはり
誰かに不幸しか与えていないのではないか
兄さんにもサッカーにも
そして…


「俺ね、剣城は黒猫っぽいなぁって思ってるんだ」

「え?」

「でもそのイメージは不幸を運ぶんじゃなくて
幸せを運んでくれるの
剣城は優しいし俺のそばにいてくれるから好きだよ
だからそんな悲しい顔しないでよ」

「………」

悲しそうな顔をしてるのはどっちだよ
優しく松風の頭を撫でてやればふんわり笑いすり寄ってきた

「お前の方が猫っぽい」

「えぇ〜そうかなぁ?」

「誰にでもそんな風にすり寄るところとかな」

「なつ!?
誰にでもなんてしてないよ・・・剣城にだけだもん・・・」

「!?///」

あぁ、どうしよう
なんでこいつはこうも可愛いんだろうか
優しくだけど力強く愛しい恋人を抱きしめて
俺達を見詰める黒猫に目線を落とし微笑んだ

嫌われ者の黒猫だけどその嫌われ者を好きだと言ってくれる奴がいる
だったら黒猫みたいだと言われるのも悪くないと思えたー


「つ、剣城恥ずかしいよ///」
「んー
もうちょい・・・」
「むぅ・・・本当に剣城って猫みたい
ちょっと可愛いかも・・・

「お前の方が可愛い」
「〜っ/////」
end


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