その暖かさが愛しくて


この時期、部活が終わる頃には辺りは薄暗くなりだし街灯も点灯しだす。


「うぅ…寒い」

「まだそこまでないだろう」

「いや、寒いって…
東京の冬って想像以上に寒い…」

「身体を動かせば寒くないだろう」

「寒くて身体動かす気になれないよ…
あ、でもサッカーはやりたい…けど冷たい風が肌を刺す感覚が嫌いだなぁ…」

「お前……」

「剣城は平気?」

「まぁ、その感覚は好きじゃない
けど、好きなことやってる間は忘れられる」

「……そっか!!
そうだよね!」

急にはしゃぎ出して本当に子供だ
だいたい、本格的な冬はこれからでこんな寒さも肌寒いくらいにさ感じない

「ねぇ、剣城!」

「なんだ?」

「東京って雪ふるの?」

「あぁ、なかなかな積りはしないが降るぞ」

「そうなんだ…!」

「そんなに珍しいもんじゃないだろう…」

「えぇ?
沖縄って全然、雪降らないんだよ…
冬でも温度が一桁なんてありえないしさ」

「そ、そうなのか…」

「うん!
暑いのは全然平気だけど
でも雪が見られるなら寒いのもちょっと楽しみ」

無邪気に笑う松風
手のひらをぎゅうっと握りしめたり擦ったりして
そんなに寒いのか…?

「松風」

「ん?」

すっと松風の手を握ったが俺の手なんかよりずっと暖かかった

「んだよ、俺よりあったけぇじゃねぇか…」
手を握ってしまったことが恥ずかしくなり
パッと離したが直ぐに握り返されてしまった

「な、なんだよ」

「剣城の手、冷たすぎ!」

「はぁ!?
お前が暖かすぎんだよ!」

恥ずかしくて仕方がない
薄暗い路地で中学生二人がぎゃぁぎゃぁ言っていては怪しすぎる
俺は松風の腕を振り払い歩き出した

「ぁ!
剣城…待ってよ!」

「……」

あぁ…手のひらが…顔が熱い…

「もぅ、剣城…
そんなに冷たいんじゃ手、痛くならない?」

「別に…
あ、でもたまに感覚がない」

「そ、それ駄目だよ!!!
ちゃんと暖かくしなきゃ!!」

「……じゃぁ」

「え?」

「じゃぁ、ずっと俺の手、握ってろ…
寒いから…」

「…うん!!」


いつも冷たく氷のようだった手は暖かい君に握られ今はもう冷たくはない

その暖かさが愛しくて―


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