チョコに埋もれて
今日はいわゆるヴァレンタイというやつだ
しかし、俺にとってはそんなイベントは地獄以外の何物でもないのだ…
「あぁ……」
「浮かない顔だな霧野」
「当たり前だっ
ヴァレンタインに学校だなんて…」
「仕方ないさ…あ、…」
「ん?どうした神童…」
すっ、と神童と同じ方向に目線を移すと他校の女生徒だろうか?ちらちらとこちらを気にしているようで俺達の視線に気付いたのかぱたぱたとこちらに近付いてきたのだった
「あ!あの!神童さん…ですよね…?」
「あ、あぁ…」
「あ、…と…その
こ、これ!受け取って下さいっ…!!
バッ!!と差し出されたのは綺麗にラッピングされた小さな箱だった
あぁ、チョコレートだな…と内心うんざりとした霧野に対して神童は持ち前の王子様スマイルで対応してその女生徒と別れた。
「さっそくか…相変わらずだな」
「冷やかすなよ…気持ちは嬉しいんだがな」
「しん…」
「霧野くんっ」
少し悲しそうな表情の神童に声をかけようとしたら今度は俺の名前を呼ばれ声のする方を見ると同じ雷門のクラスメイトの女子だったそれから学校に着くまでの間にお互い両手では抱えきれない数のチョコレートを渡されていた
「やっと、学校に着いた……」
安心したのもつかの間ここからが本当の地獄の始まりだった…
朝練が終わればたくさんの女生徒達に囲まれ、教室に着けば机の中にロッカーの中にとこれでもかと言わんばかりにチョコレートが詰め込まれており
授業の合間の休み時間、昼休みとも女子達からのチョコレート攻めに俺も神童も苦笑いをするしかなかった
結局、二人とも部活に向かう時間には用意していた2つの大きな紙袋に収まりきらない量のチョコレートを抱えてサッカー棟へと向かうことになっていた
途中、一人で部室に向かう天馬に声をかけられた
「キャプテーン!霧野センパーイ!…
その紙袋って…」
「あぁ、全部チョコレートだよ」
「すごいですね…」
「って言っても毎年だからもう慣れたよ、なぁ神童」
「まぁ」
だが今年は去年よりも多くてしばらくチョコレートの生活になるなぁと二人で話していると天馬の様子が可笑しいことに気付いた神童が声をかける
「天馬、どうかしたか?」
「え?あ、いえなんでもないですよ!
俺、先に行ってますね!!」
バタバタと走り出して行ってしまい天馬の後ろ姿を二人は呆然と見送ってしまった
「どうしたんだろうな天馬のやつ…」
「まぁ、大方の予想はつくけどなぁ」
くすくすと笑う霧野を見て、あぁなるほどと神童もわかったようで再び歩き出そうとしたら少し焦ったような剣城の姿を視界に捕らえどちらからともなく目線だけ合わせ頷いた
「遠回り…するか神童」
「そうだな」
全く手のかかる後輩たちだなと微笑む神童を見てあっ、と思い出した霧野はチョコレートの入った紙袋を置き鞄の中を探りはじめた「はぃ、神童」
霧野から渡されたそれはブルーのリボンでラッピングされたギモーブチョコであった
「ぁ…ありがとう霧野
俺からも…」
そう言って神童が渡したのはチョコレートとプレーンのフィナンシェだった
「ありがとう…凄く嬉しいよ、
なぁ神童…」
「ん?」
「今日、貰ったチョコレートで神童からのが一番嬉しい
ありがとうな」
神童の緩やかなウェーブのかかったふわふわの髪を撫でながら優しくキスを贈った
あっという間に真っ赤になる彼が愛しくてたまらないてぎゅぅっと抱き締めた
「き、霧野!?」
「神童…すき…大好き」
「―ッ!////」
たくさんのチョコに埋もれても君がくれた物だけを愛してる―
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ギモーブ=マシュマロで
ギモーブはフランス語です。
霧野先輩があげたのはマシュマロにチョコレートをコーティングしたものでホットミルク等に溶かして頂くものだったりします☆
end