小説 | ナノ


  真実と過去


ここはどこだ。
目が覚めたらそこは見たことが無い場所だった。
ゴツゴツとした岩肌が冷たい雰囲気を醸し出しており、そこに敷かれた茣蓙に自分は臥していた。

「…」

自分の腹部から胸部にかけて包帯が巻かれている。

「無理に体を起こさない方がいい」

声がした方を向けば赤い仮面を付けた男が「自分はイタチの真実を知る者だ」と名乗った。
復讐相手であるイタチは自分の前で死んだ。
まるで嘘みたいだ、幻術なんじゃないかと未だ信じられない。
以前カカシが「復讐の後には何も残らない」と言っていた気がするが、まさにこのことを言うのだろうか。
イタチを殺すことが目的だった。
その目的を果たすために毎日を生きていた、否、そのためだけに生きてきた。
これで目的が達成された。
満足だ。

「お前は兄の事を知っているようで何も知らない」

突然現れたその仮面の男は、うちは一族の末裔で「うちはマダラ」というらしい。

「イタチのことなら何でも知っている、…まぁイタチはそのことに気付かず死んだがな」

死んだ奴のことをゴタゴタと煩い野郎だ。

「うるせェ!そんなことはもうどうだっていい!オレの前から消えろ!!」


うちはマダラは全てはイタチがオレを守るためだと言った。
…何を言っているのか分からない。
うちはイタチは一族を抹殺し、幾度となく自分を殺そうとした。
あの紅い眼で睨み、そして口元には余裕な笑みを浮かべていたはずだ。
そんなイタチが自分を守る、だと?
よくもまぁふざけたことを言えたもんだ。

「お前は聞かなくてはならない!それがお前の義務だ!」

「…」

「忍の世の為、木ノ葉の為、そして何より弟のお前の為に全てを懸けた―兄うちはイタチと姉○○の生き様を!!」







「――だ」

「…うそだ」

「そんなのうそに決まってるだろ」

うちはが木ノ葉に対してクーデターを企んでいて、
イタチは里と一族のスパイで、しかも二重スパイしていて
それだけではない、姉の○○も一族の為に利用されていた。

「○○もそうだ、クーデター計画を隠すための隠れ蓑として使われた。まぁ、イタチが木ノ葉にうちはの情報を流していたんだから○○がやっていたことは無駄だったんだがな」

「…」

「言っておくがお前の姉も“あの夜”の実行者だぞ」

「!?」

今までずっと姉さんとは一族を抹殺された苦しみを共有しているつもりだった。
姉さんもイタチを恨んでいると思っていた。


「木ノ葉上層部は二人の暗部に極秘任務を言い渡した…」

木ノ葉の里にクーデターを起こそうとする戦闘一族の抹殺という任務
目には目を、写輪眼には写輪眼を。


「二人は知らなかった、自分以外のもう一人の人物が任務を言い渡されていたことを」
どちらかが抹殺に失敗しても、もう一人が成功させるように。
任務の施行者も口封じのため殺させようとしていた、優秀な医療忍者の毒で。

「しかし、結局二人は知ってしまった。もう一人の暗部は、唯一無二の姉弟だと」

「そんな、姉さんまで…、いや、ちょっと待て、つまり木ノ葉は姉さんとイタチも殺そうとしたのか?」

「そうだ」

頭が痛い。
もう聞きたくない。


「お前は知らないだろうが、○○は6歳で人を殺している」

「!!」

優しい姉さんがそんな小さな歳のうちから命を奪っていたなんて知らなかった。

「そうしなければ、イタチは殺されていた」

姉さんが6歳というと、イタチは4歳
その時起こった出来事といえば…

「第三次忍界大戦…」

「そうだ。戦争は地獄だ。二人とも戦争を経験するには幼すぎた
それゆえに○○とイタチはなによりも平和を愛する性格になった。
…うちは一族は木ノ葉にクーデターを企み、その上戦闘一族と名高い「うちは」がもし本当にクーデターを実行したとすれば里内に大混乱を招き、勢力の弱まった里に向かって非同盟国が戦争を仕掛けてくるかもしれない。
そうなれば、昔見た地獄絵図の再来だ」

「里の平和を何よりも愛した二人、里の上層部はそこにつけこんだ」
それを阻止するために二人は一族の抹殺を命じられた。

「まぁ、○○は一族抹殺を実行する前に止められたらしいがな」

「止められた…?」

「あぁ。イタチが全ての汚れ役を引き受けた」

イタチの真実を知る者、

「○○は誰よりもアイツを理解していた」

それはとても近い存在だった、


「だからお前を騙し続けてきた…それがイタチとの約束だった…
死んだ両親の代わりにお前を育て、生活費を稼ぐために暗部と病院勤務を両立し、お前が復讐に燃える姿を複雑な気持ちで見守っていた」


姉さんもイタチも互いにオレを守っていた。


「お前の兄も姉もとても優しい。優しすぎたんだ。」


脳裏に浮かぶ最期のイタチの姿。
血まみれの手を額に押し当て、そして笑って倒れた。
その顔は幼い頃見た、大好きだったあの頃と重なった。


「イタチはお前にうちはの闇を隠し、自分が犯罪者だと思わせたままこの世を去った。
そして○○もお前にイタチのことを決して語らないだろう。お前に真実を話したらイタチがしてきたことは全て無駄になるからな」



オレは愛されていた。




「…っ…うっ…」

喉が苦しい
胸も苦しい
目の前がよく見えない


「うっ、ひっ…ぐっ…」

泣くな、止まれ。
泣くな、泣くな、泣くな
泣いたって…イタチは、帰ってこない



兄は帰ってこない。









***

以前、上月が完結した時に「サスケ視点があるといい」というコメントを頂いたので書いてみました。
マダラさんに全てを喋ってもらいました。
イタチと姉の過去のほとんどを省きましたが…、マダラが全てサスケに暴露したと考えて頂ければ結構です。
マダラが知ってることにも限界があると思うので、(姉がイタチとサスケの水筒に解毒剤入れておいたとか)そこらへんは幼少期を参照してください。

でもサスケには自分が姉を傷つけていたことを知ってもらいたかったから書けて満足。
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