小説 | ナノ


  ねこみみ


「おや、いらっしゃい」

うちは家御用達の武器屋。
猫バアが経営する忍具専門店である。

「こんにちは猫バア、ほら、サスケも挨拶しな」

「こんにちわ!!ねー、ねこバア!!はやくあれやりたーい!!」

サスケの言う「あれ」というのは、この店にイタチとおつかいに来たのは良いものの、おつかいだけでは面白くない!とサスケが店の中で暴れたため、
店の近くに居る猫の肉球スタンプを集めさせるというイタチがサスケに課したノルマ(ゲーム)のことである。


猫にとって肉球スタンプを取られるということは恥であり、それゆえ彼らはサスケから必死に逃げる。
それがサスケにとってはとても面白いらしい。

「ほれ、気を付けていくんじゃぞ?」

「うん!」

猫バアはサスケに本日のノルマ対象である猫の写真を渡す。
サスケが猫を追いかけている間、イタチは猫バアに母から言われた武器を伝えた。
しばらくすると、店の外がドタドタと騒がしくなり入り口から両手で茶色の猫を抱き上げたサスケが入ってきた。

「にーさん!スタンプ!!」

おお、今日は早かったな。とイタチはいつものように引き出しの中から紙と朱肉を取り出して本日のノルマ対象「チャチャ」の肉球スタンプをサスケに押させた。
おつかいの物はまだ準備出来てはいない。
しかし、新しいノルマを渡すと時間がいくら掛かるか予想が出来ない。

「そうだ、猫バア」

「なんだい?」

「猫の砦を散歩してきてもいい?」

イタチが思いついたのは、猫だけが住んでいる「猫の砦」をサスケと散歩すること。
猫の砦を治める「猫又」をノルマ対象にする許可を得ようとして砦を攻め落としたのをきっかけに、猫又の権力でイタチは砦に入っても不審者扱いされないことになっている。

おお、それは良い考えだ。と猫バアは二人に白い猫耳のカチューシャを渡した。

「これ、なに?」

「猫とお話出来るんだよ。今から猫の砦に行くからね」

「とりでってなぁに?」

「お城のことだよ」

「ねこのおしろ!!」と目をキラキラさせたサスケはイタチの手からカチューシャを奪って、自分に着けた。

そんな弟が微笑ましく思えて、サスケの手を引いてイタチは歩きだした。


イタチが2匹の門番猫に「お疲れ様」とマタタビジュースを渡すとサスケは不思議そうな目でイタチを見上げた。

「なにわたしたの?」

「サスケが飲んでも美味しくないよ。猫のジュースだから…」

「ふぅーん」

サスケの興味はジュースから移り、二足歩行する猫達へと向いた。
サスケが今まで見てきた猫というのは、路地裏や庭先にいる至って普通の猫。
しかし、この砦内では猫が服を着て、時には傘を差し、「今日はいい天気ですねぇ」なんていう会話までしているのだ。

興味が湧かないわけがない。


◇◇◇


『こんにちは、猫バア。ちょっと任務で使う武器がほしいんだけど…』

「おや○○、元気だったかい?さっきねぇ、イタチとサスケもここに来てたんだよ」

○○は暗部の任務で必要な武器を買いに来たが、弟達もここに来ていたことを知り少し驚いた。

『もう帰っちゃった?』

「いいや。今ねぇ、猫の砦に散歩しに行ってるよ」
ほら、帰ってきた。

そう言った猫バアが指差した方に手をつなぐ二つの影が見えた。
店の外に出て、その影に手を振ると小さな手がブンブンと左右に揺れる。
サスケは姉を見つけるとイタチの手を引いて走った。

「サスケ、転ぶなよ」

「ころばないー!!」

○○は全速力で走ってきたサスケをなんとか受け止め、腰に抱きついているサスケの頭を撫でた。


『あらサスケ、可愛いのが付いてるね』
イタチも。

イタチは砦を出てからカチューシャを取るのを忘れていたらしく、○○に言われてから急いで頭から外した。

 
『あー!なんで外しちゃうの!?可愛かったのに…』

「ねー?サスケ」と問うと、サスケも「ねー」とイタチを見ながら答えた。

イタチはどうやら○○に猫耳姿を見られたのが恥ずかしかったらしく、顔を真っ赤にして後ろを向いてしまった。


「……もう帰るぞ!」

『あらー、照れちゃった』

イタチと○○はは店の中に入り、猫バアから頼んでいたものを受け取り、代金を払って店を後にする。


サスケを真ん中に挟んで、3人で手を繋いで道を歩く。
赤かった空も暗くなりかけていた。


『…そういえば、来年の干支ってなんだっけ?』

「兎だよ、どうしたの?」

『サスケとイタチの猫耳写真を年賀状に乗せてもらおうとお母さんに頼もうかなぁって思ったんだけど…うさぎかぁ…』

せめて寅だよなぁ、と溜め息を吐く。


「写真はサスケだけにして。俺はだめ」
それに、トラと猫って違うでしょ。


『あんまり変わらないよ?…たぶん』


そう答えた○○にイタチはくすっと笑った。





***
この話を書くにあたって2回ほどアニメを見直しました。
テレビ放送時は最初からは見てなかったので、この肉球集めがイタチが考えたことなんてしりませんでした。イタチかわいすぎる。サスケがエンジェルすぎる。

きっとこの頃のイタチは10歳でサスケは5歳。
そして姉は12歳です。
とりあえずイタチが照れてる姿とサスケがお兄ちゃんお姉ちゃん大好き具合をめり込んでみました。

紗沙様リクエストありがとうございました。
「肉球絡み」の話だったんですが…最後にちょっとだけイタチの猫耳をいじってみました。期待に沿えてなかったらすいません。
表現力とか文章力とか無くてすいません。


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -