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保健委員会の薬草園に行ったら六年ろ組の中在家長次が熱心に何かを植えていた。
もう六年もこの学園にいるから分かる。
長次は花が好きだ。
「長次」
「…伊作か、なんだ」
「その花、珍しいね」
「…もそ。この前カステーラさんが…くれた」
「あぁ、あの時か」
南蛮の商人クエン・カステーラさんがこの間、忍術学園に遊びに来た。おそらくその時だろう。
どうやら学園長に話があったようだったがよくは知らない。
「なんていう花なの?」
長次の声は相変わらず小さい。
寡黙な男だ。
耳を澄ませば彼の口からは異国の言葉らしいものが発せられた。
「……Myosotis」
「み、みお…?」
「たしか、和名は……」
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