「なまえ、」

あまいあまい声のあと、ふれるだけのキスをされた。恥ずかしさを紛らわすために身をよじると、わたしを抱きしめる腕のちからが強くなる。

「照れたなまえも可愛いな」

風丸くんがにへ、と笑う。そんな風丸くんはわたしなんかよりずっと可愛くて、それでいてかっこよくて。胸の奥がきゅうん、とした。

「顔、真っ赤だぞ」
「風丸くんのせいだよ」
「知ってる」

くすくす笑いながらわたしの頭を撫でる風丸くん。その手が少しずつ下りていき、今度は髪を掬われる。

「きれいだよな。なまえの髪」
「風丸くんの髪のほうがずっときれい」
「そんなこと無いさ、結構枝毛とかあるし」
「本当?」

疑わしく思いながら風丸くんの髪に手を伸ばすと、本当に毛先が荒れていた。でもそれが逆に男の子っぽくて、またきゅんとしてしまう。

「…なあなまえ」
「なに?」
「あー、えっと、その…近くないか?」

気付けば風丸くんの顔は耳まで真っ赤で、視線は虚空を彷徨っていた。

「そんなに近いと、また、キスしたくなる」
「…ん。」

もう一回いいよ、という意味を込めて、わたしは目を閉じた。視界を閉ざすと他の神経が敏感になったようで、風丸くんの呼吸まではっきりと感じる。

「…ばあか」

何かを諦めたように言った風丸くんは、先ほどとは比べ物にならないくらいの勢いで私の唇に噛み付いた。精神的にも物理的にも、胸が苦しくなる。そんな状況が数十秒ほど続いた。

「あんま可愛いこと、するな」
「…どういうこと?」

くちもとを手首で拭いながら、赤い顔を伏せる風丸。何かマズいことしてしまったのだろうか。

「分からないなら別にいい」
「え、でも」
「いいって。何かもう恥ずかしくなってきた」

やけになったように声のボリュームを上げられた。こんな風丸くんは初めて見るかもしれない。何だか嬉しい。

「…そういうのは帰ってからやれよな」

どこからか半田くんの声が聞こえた気がしたけど、多分空耳だ。

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