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好きな人をいじめてしまう男子なんていうのは小学校、中学校には腐るほど居て、それと同じように高校生の中にも好きな人に対し素直になれない女は居る。何故そんなことが言えるのかというと、それは私自身がそうだからだ。現についさっきだって、密かに想いを寄せている紀田の誕生日ということでプレゼントを用意したというのに、「なあなあ、今日は何の日だーっ!」という紀田からのコールを「父の日」と言って即刻切ってしまった。ちなみにメアドもケー番も教えていない(聞かれても突っ撥ねてしまう)ため家電にかかってきた。なんてヤツだ。両親のどちらかが出ていたらどうするつもりだったのだろう。運良く父は弟と出かけているし、母は父の日だからと張り切って夕飯の買い物に行っているから問題なかったのだが。
それにしても、と指先で両手に収まるサイズの箱をいじる。あまり高そうなものを渡すと不機嫌になるから程よく、とか、使いやすいものを、とか色々考えて買ったのに、最後の一段がなかなか上れない。ただ「誕生日おめでとう」って、これを差し出すだけでいいのに。
いっそのこともう一度こっちから電話してしまおうかと思っていると、インターホンが鳴った。両手いっぱいに荷物を持った母だろうなと何気なく扉を開けると、母にしてはあまりにも髪の色が明るく、ピアスだらけの姿。

「よ、なまえ!」

扉を閉めた。おかしいな、誰だあれ。物凄く紀田に似ていたけど…紀田?

「何で閉めるんだよオイー!」
「うわあああ紀田ああああ!!」

勝手に戸を開けた紀田は輝かしい笑顔で私に抱き付き、酷いやつだなあとかだがそこもイイとか言いながら頬擦りしてくる。

「な、ななななに、」
「おいおーい、忘れたとは言わせないぜ?金曜に超アピールしたじゃねえか、今日は何の日だ?」
「ち・ち・の・ひ!」
「お前さっきから父の日父の日って…ああ!」

何かに気付いたような閃いたような、そんな目をした紀田は一旦私から離れ、右手の指で顎を撫でながら「そうか、そういうことか…」等とぶつぶつ言いつつ百面相をしている。

「ごめんななまえ…。ツンデレなお前の精一杯のアピールに今更気付いた俺は、男として最低だ」
「は?」
「つまりさ、「正臣ならいいお父さんになれるよ」っていう遠回しのお誘いだったんだよな?」
「えっ意味わかんない」
「なまえも最高のお母さんになれる筈だ、俺が保証する!だから二人で幸せな家庭をきづいたたた痛い痛痛たたたただだ」
「その減らず口縫い付けてやっろっうっかぁあんんん?」
「いあああだだだ痛いいたた」

紀田の頭を鷲掴みにし、力一杯下へ下へ押さえ付けた。そろそろ本気でつらそうだなというタイミングで手を離し、リビングへと足を向ける。

「あっ、おい、なまえ!?」

テーブルの上の小箱を引っ掴み、紀田に投げ付けた。うまくキャッチはしたものの、ぽかんとした表情で私とプレゼントを交互に見つめる紀田。そのアホ面に対し、ぴんと人差し指を立てた。

「それ持ってさっさと帰れ!」

捨て台詞を吐いた後に見た紀田の顔は珍しく赤くなっていたが、多分私の方がもっと赤いだろうなと思った。


プリンス・ロマンス


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