mix log | ナノ


「うわ、あ」

シャッフルに失敗し、手の平からぱらぱらとカードが落ちていく。慣れた手つきでカードを混ぜていた先導くんは、私が落としたカードを見てくすりと笑った。

「当てたんだ、グレード3」
「…ファイト中に出して驚かせようと思ったのに」

肩を落としながらのろのろとカードを拾う。先導くんは未だ楽しそうに笑ったままだ。ちょっと強いからって、いい気になっちゃって。

「みょうじさんって、シャッフルあんまり上手くないよね」
「中途半端にオブラートに包まれても逆に傷つくんだけど」
「えっ、ご、ごめん!」

困り顔であっさり謝罪してきた。こういう素直で優しいところとか、中三男子らしからぬ可愛い仕草とか、そういうところが、私はすごく好きだ。もちろん恋愛的意味も込めて。

「あ、ねえみょうじさん」
「なに?」
「手」

はにかみながら右手を出してくる先導くん。まるで何かをストップさせるようなポーズになっている。わけが分からず首を傾げると、先導くんはにこやかに言った。

「重ねてみて」

星とハートマークが出そうなくらいに魅力的な笑顔だ。おかしいな、たしか先導くんは思春期にスルーされたようなシャイっ子だったはず。…いや、だからこそ軽いスキンシップが平気なのか?

「みょうじさん?」
「っあ、ごめん」

ばれないようにこっそり深呼吸して、おずおずと先導くんの右手に自分の左手を重ねる。手首の位置を合わせサイズを比べると、想像以上の差があった。

「やっぱり。手が小さいからシャッフルしにくいんだよ」
「小さいのかな」
「うん。僕から見たら、だけど」

そのままなんとなく離すタイミングを掴めず、手を重ねたまま行動停止。先導くんはというと、合わさった手を真顔で見つめている。
どうしようかと自問自答していると、指を軽くずらされ、ぎゅっと握られた。何と言うか、恋人繋ぎ、みたいなやつ。

「…先導、くん?」
「っわ、えと、ごめんね!気がついたら指が動いてて、その、」

そうは言いながらも、中々手を離そうとしてくれない。どのものさしで測っても女の子同然だったはずの先導くんの手からは、女の子のそれとは違い、どこか力強さを感じる。正直心臓が爆発寸前だ。真夏日でも何でもないのに、異様なほど顔があつい。
気がつくと、先導くんがまじまじと私の顔を見据えていた。きらきらと輝く目で、息を飲むほど真っ直ぐに。
テーブル越しに距離を狭められる。右手に握っていたデッキが無残にも床に落下し、散らばった。それほど私は余裕を失っているわけだ。

「せんど、く、」

やっとの思いで出した言葉もいまいち形にならなかった。酸素が足りなくなってきたけれど、深く呼吸することも出来ない。それこそ、目と鼻の先に先導くんが居るのだから。

「テーブルに足を乗せちゃダメですよお」

ぅあ、という声が双方の口から漏れた。冷静になって見ると、先導くんの片膝がテーブルに乗っている。

「…すみません、店長」

聞こえるか聞こえないかのボリュームでもごもごと謝った先導くんは、赤くなった顔を隠すように椅子の上で縮こまった。ああもう、まだ顔があつい。


きっとその指先よりあまいものは
君の唇だけだろうね



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -