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「当然みんな可愛いけど、美希もすごく可愛いでしょ」

羨ましいなあ、と思った。美希、って苗字じゃなく名前で呼んでもらえることも、可愛いという評価も、それをなまえからされることも。全部全部羨ましい。ボクは菊地君って呼ばれるし、あっちでもこっちでもかっこいいと評価されるし、なまえもボクを王子みたいだと言う。ボクは男として育てられたからとかじゃなく、ちゃんと女としてなまえのことが好きなのに。彼女は何も分かっていない。

「でもさ、美希が一番きらきらしてるのは、ステージに立ってるときと、プロデューサーと一緒に居るときなんだよね」

どうやらなまえも気付いていたらしい。美希は多分、いや、絶対プロデューサーのことが好きだ。10歳近く年が違うが、美希は本気なのだろう。見ていれば分かる。軽く接しているように見えたりもするが、あの目はいつでも本物だった。ボクと一緒だ。なまえを見ているときのボクの目と瓜二つ。

「悔しいなあ。私は美希と一緒に歌えるし、踊れるし、雑誌にも載れる。だけど、美希を引き立たせることは出来ても、輝かせることは出来ないみたいで」

それはボクも同じだ。なまえとのデュエット曲もあるし、この前のステージでは二人で踊ったし、先週撮影した写真にはボクらのツーショット写真がいっぱいだ。でも、なまえを輝かせているのは、スタッフさんとプロデューサー、そして他でもなく美希。どんどん前に進んでいく美希を追いかけて、なまえもスポットライトを浴びている。みょうじなまえは、星井美希を目指して輝いているのだ。

「諦めるしかないよね、菊地君」
「…なまえ?」
「実は私、憧れ以前に、普通に美希のこと好きなの。…ああ、普通じゃあないか」

好き、すき、スキ?普通じゃあない?
ぐるぐると脳みそがミキサーにかけられて、視界が揺らめき、滲む。女の子同士なのだから叶いそうにもない恋だと思っていたのに、まさか別の女の子が好きだったなんて。遠くで響と雑談している美希を見るなまえの目は、

「諦めるしかないよね、菊地君」


誰なのよオンブズマン


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