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口に出したら絶対に怒られるようなことをいくつか心中で呟かせていただくことにしよう。
宮地超可愛い。いつもはムスッとしているのに生クリームだけで口元が緩くなってしまうところが素晴らしく可愛い。カフェでビッグサイズのストロベリーパフェを黙々と咀嚼している姿なんかもうたまらなく可愛い。そんな宮地の向かいで私はレモンスカッシュのみを頂いているわけだが(商品を運んできた店員さんも逆じゃないのかと一瞬うろたえていた)、これじゃまるで私が彼氏で宮地が彼女だ。うん。許す。

「む…どうしたみょうじ。そう見られると食べにくいだろう」

今までガッツリ食っといてよく言うよ。しかし本当に居心地悪そうにそわそわとスプーンを弄び始めるものだから、ここは素直に謝っておくことにする。

「ごめんごめん。他意は無いよ」

というのは嘘で他意ありまくりなわけだが。だって宮地は性格だけじゃなく顔までいいんだから、じろじろ眺めてしまったって誰もが仕方ないなと肩を竦めて見逃してくれるだろう。訝しげに眉間にしわを寄せるのは宮地本人くらいのものだ。

「みょうじ」
「なに?」
「た、食べるか?」

パフェを入れるよくある少し縦長の容器(正式名称あるのか?)の細くなっている部分をつまみ、2センチほどこちらに滑らせた宮地は妙に緊張した面持ちである。別に私は国王でもなければ宮地も臣下ではないし、このパフェだって献上品ではないのに、何故そんなに緊張しきりの真面目な顔をしていらっしゃるのだろう。

「いや…別にいいけど」
「そっ、そう言うな。一口味見してみるといい」

何だこいつ、もしかして私の視線の中に食わせろよという言葉が混じっていたとでも思ったのか?ちくしょう、勘違い宮地も可愛いから悔しい。私の機嫌を損ねないようにと彼氏らしく頑張ってくれているのが良い。すごく良い。

「一口だけね」
「……なんっ、なんのつもりだ」

前のめりになって口を開けた私をしばらく凝視した後、さっと視線を逸らす宮地。そんなにガン見したってメニューにプリントされているマスコットキャラクターは踊り出したりなんかしないぞ。

「あーん、は?」
「なっ…き、木ノ瀬じゃあるまいし、馬鹿なことを言うな!」

おお、照れた。さすがに木ノ瀬くらいの大胆さになると私もたまに頭を抱えたくなってしまうが、いやはや宮地さん、アンタ、とことん純情くんだね。そういうところも可愛いからむしろばっちこいもっとやれとこの場で叫びたくなったが、自分の辞書に常識の二字がある人間はそんなことはしない。

「ジョークだよジョーク。ちょっとやってみただけ」

そう言うと宮地は苦言でも呈してやろうかと思っているのかひとしきり口の中をもごもごさせ、結局飲み込むでもなく吐き出すでもなく、代わりにまたパフェをスライドさせた。うーん、可愛い。これが一度弓道場に足を踏み入れると途端に鬼と化すんだから、まったく、人間って不思議だね。


ひたひたと心臓を染めていくもの

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