「うーん…」 「食べ物はハズれないと思いますよ」 「うーん……うん。そうだよねえ」 「何か作りますか?」 「でも、テツヤ君は頼りになら…あ、あんまり、上手くな…下手では…ええと…」 「そう言葉を選ばれると逆に抉られるんですけど」 「…ごっ、ごめん……」 「もういっそゆでたまごが限界の不器用男とでも呼んでください」 「え、でも…さすがに」 「さあ、一思いに」 「……ゆっ、ゆで、ゆでたまごが、限界の…ぶ、不器用…男!」 「……………悪くない」 「今小声で何と」 「いえ何も」 「…そう?」 「そうです。心配しなくともボクは隠れSの攻め攻めですから」 「攻め…?天下でも取るの?」 「そういうことにしておいてください」 「さて、結局ボクはアシスタントという形でエプロンを着ることになったわけですが」 「テツヤ君まだ買い物中だよ、エプロン着てないよ」 「喩えです」 「うん?うん…まあいいや」 「まずは何を買えばいいんでしょうか」 「あ、テツヤ君、いいよ。かごは私が…」 「ダメです」 「…ダメなの?」 「ダメです。ボクが持ちます」 「…じゃあ、お願いします」 「さあ、戦闘開始ですよ」 「そんなまぐろの解体ショー始めそうな目で言わないで、ケーキ作るだけだよ」 「たかがケーキ、されどケーキです。ナメてかかったら怪我します」 「まあ、指切ったりは…するけど」 「その時は舐めて消毒してあげますからね」 「舐っ、え、ええ!?」 「なんて、半分冗談ですよ。女の子なんですから、跡でも残ってしまったら大変でしょう。舐めなくて済むように充分気を付けてください」 「あ…う、うん。あり、がとう。気を付けます」 「何だかんだありましたが、完成しましたね」 「…そうだね」 「?大丈夫ですか、心なしかぐったりしてるように見えますけど」 「いや…うん。大丈夫」 「そうは見えませんよ、休んだ方が…」 「大丈夫、大丈夫だから。ただ…ひとつ約束してくれる?」 「なんですか?」 「この先の人生、極力バニラエッセンスは…握らないでね。お願い、お願いだからやめてね。もう、あんなこと…あん、あんな…もう…」 一体バニラエッセンスで何したんだ… |