あれ、おかしいなあ。私は護身用にってカッターナイフを持ち歩いていたのに、どうしてその刃が私の首筋を撫でようとしているのだろう。 「言っただろう、君は僕のものだって」 笑っているのかいないのか。どちらにしろ恐ろしい。ただ、今にも本気で私を殺しそうな目をしていることだけは確かだ。 「他の男と必要以上話すな、って。そう言っただろう。一切関わるなとまでは言わなかった。女は規制しなかった。なのに、何でこんなことも守れないんだ」 ついに刃が私の首の左側に触れた。少しでも力が入ってしまえば、と思うと怖くて怖くて仕方がない。 「怖いのは僕の方だ」 私の心、それとも表情を読んだのか。赤司くんは苦い顔をして、顔を少し背けた。 「誰かに奪われるんじゃないかって、いつも不安で落ち着かない」 「…赤司くん」 「だから、いっそ殺してしまおうか、って」 「ねえ、赤司くん」 赤司くん。私はね、あなたが思ってるより、きっともっとあなたのことが好きなんだよ。むしろ赤司くんが私に飽きてるんじゃないかって不安なんだよ。そのくせ、私は私が赤司くんを怖がることが怖い。嫌いになりそうで怖い。タイミング良く誰かに優しくされたら流れちゃうんじゃないか、って、いつもいつも怖い。 赤司くん、ずっと繋ぎ止めててくれないかな。私がずっと赤司くんから離れないように。赤司くんが居ないと生きられないような私にしてくれないかな。 |