ただひたすら屋上でぼけっと空を見上げているくらいには暇である。テストは終わったばかりだし、課題も無いし、これといった趣味も無い。残りの昼休みもずっとこのままでいいかな。ちなみに雲はあまり浮かんでいない。ついでに暑い。 「何企んでるの?」 そう言いつつ振り返ると、黒子君は控えめにぱちくりと瞬きをした。可愛い。 「よく気付きましたね」 「そりゃあね」 「何かを企んでいたわけではありませんよ」 後ろを向いていた首を真っ直ぐ戻すと、小さく衣擦れの音。左肩がくすぐったい。背後から腰に回された腕が思ったよりも頼りがいがありそうな感じで、ちょっとどきっとしたのは秘密だ。 「汗臭いでしょ」 「少しだけ」 「後で拭いとかなきゃなあ」 「その必要はないと思います」 「どうして?」 「本当に少しだけですから。これくらい近付かないと分からない。だからボク以外には分かりませんよ」 ぎゅう、とお腹が圧迫された。身長は少し黒子君の方が高いかな、くらいのものだから、顔が近くて緊張する。 「黒子君以外にひっつく人が居たらどうする?」 「居ませんよ」 「もしもの話」 「居ません。ありえません」 「まあ、私あんまり魅力ないしね」 「それもありえません。ボクがさせないって意味です」 すごい殺し文句だ。昼休み終了を知らせるチャイムが鳴り始めたけれど、お互い授業に出る気はもう無いらしい。 |