マサキはたまに、これでもかというくらい思いっきり甘えてくる。たぶん私が一番手頃なのだ。同じ施設に住んでるし、同い年だし、べらべら喋る方じゃないから醜態(と本人は思っている様子)をばらされる心配もないし、あと抱き心地がいいと言われた。自分じゃ確かめようがないけれど、そうらしい。 「お前、子供体温…ってやつなんだろーなぁ」 「子供体温ってなによ」 「あったけえの。毎回。いつでも」 「そういうのが子供体温なの?」 「さあ。よくは知らね」 「なにそれ」 私の首の左側にこめかみを押し付けながら声を出すマサキの息が少しくすぐったい。ミントの香りがする。ガムかな。 「なんつーかさ」 「うん」 「面倒だよな」 「なにが?」 「たまーにだけど、ほら、あるだろ。マイナス思考になるとき」 「ああ、あるね。私なんかいつもネガティブだけど」 「いつも?」 「うーん。まあ、大抵」 ふうん、と興味があるのかないのか微妙なラインの返事とも言えない返事。 「あのさ」 妙にかしこまったような色が滲んだ声だ。ちょっと不思議に思いながら、なあに、と返す。 「いつも俺ばっか甘えてさ」 「うん」 「なんか、悔しい…から、さあ」 「うん」 「たまには、その…甘えてこい…っていうか…」 あら、まあ、そんなことを考えてたのか。やっぱり根はすごく優しい子だ。 「じゃあ、たまーに、ね」 「……いや、やっぱ、毎日でも…」 「それは多いでしょ」 「多っ…そ、そう…か。うん。そうだよな。うわ、なに言ってんだよ、俺」 なんて、ちらちら見える耳は真っ赤なくせに私から離れないあたり、マサキは甘えん坊だ。 |