放課後の教室。使い捨てフォークで苺をつつきながら、クリームの乗った舌で歯の裏をなぞる。甘い。たまに少しだけ食べる、というぶんにはなかなかいいものだ、ケーキというのは。ついさっき購買で買ってきたものである。さすがにいつもは無いが、なんでも校長が誕生日だとかで特別に今週だけ売られるらしく、そういえばミーシャがプレゼントを渡しに行くと言っていたような気もする。 「随分と珍しい光景だ」 「…なによ」 振り返るのも億劫だったが、一応首をひねった。斜め後ろで偉そうに口角を上げる変態野郎は私の右手が握っているフォークの先を一瞥し、いらつく笑み。 「少しは女性らしさを磨く気になってきていると見た」 「どうしてそうなるのか、私にはさっぱり」 「いつもブラックコーヒーの缶を握っているような君が甘いものを口にしているなんて、そうとしか思えない。あくまでも個人的には、だがね」 「甘いものなんて、イヴェールがいつも食べてるじゃない。あれは男よ」 「それとこれとは話が別さ」 隣席の椅子を引いて腰を下ろし、頬杖をついて足を組む。どうしてこいつはこういつもいつも言動全て上から目線なのだろう。 「お味のほどは如何かな?」 「普通に美味しいわよ。そのへんのおしゃれなケーキショップに紛れててもおかしくないんじゃないかしら」 「一口いただこうか」 「嫌」 そう言うと思ったよ、と言わんばかりにこの金髪ロン毛は笑みを深めた。こいつの予想通りというのはむかつくが、かといって一口やるのも気が乗らない。どうするべきかな。 |