neta | ナノ
 
「ジンくん、と、となり…いいかな」
「…ああ」
「(ああああ、ついに言ってしまった…!ああ、って、いいんだよね、いいんだよね!隣、いいってことだよね!)」
「(……まさか彼女から来てくれるとは思っていなかった…。つい承諾してしまったが、気の利いた話ができるだろうか…)」
「あ、えっと、二人で話すの、初めてだね」
「ああ、…そうだな」
「(…ど、どうしよう、話題が見つからない)」
「(何か彼女が喜びそうな話は…)」
「…」
「…料理が、得意だと聞いた」
「えっ、りょ、りょうり?」
「ジェシカから」
「あ、うん。下手の横好きだけどね」
「いや、相当な腕だと…ジェシカが」
「そんなことは…。…でも、うん。料理するのは、すごく好き。大好き」
「っ、そ、そうか」
「…ジンくん?」
「(な、なに動揺してるんだ僕は…!)」
「ジンくーん」
「っあ、す、すまない」
「う、ううん」
「(…情けない)」
「(私なんかと話すの、やっぱりつまらないのかな…)」
「(…さすがに、いきなり手料理を作ってくれと頼むのはおかしいだろうか…)」
「(きっと一人でゆっくりしてたかったのかもしれないのに、私が突然…だけど優しいジンくんが断れるわけ…ああもう…)」
「…手料理…」
「えっ?」
「え、あ…いっ、いや、今のはっ、(…いっそこの流れで頼んでみようか…いや、しかし…)」
「…あの、私、やっぱり向こうに…」
「いや、ここに居てくれ!」
「…え?」
「あっ、いや、その…」
「……ジンくん、えっと、手…(に、握ってる…!)」
「っあ、う、す、すまない!(何してるんだ僕は、彼女を驚かせてしまったじゃないか…!)」
「と、となり…居てもいいの?」
「…」
「(う、頷いた…かわいい…)じゃあ、遠慮なく…へへ」
「(わ、笑った…かわいい…)」

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