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「過去に行くんだって?」

わざと挑発するような声を出したつもりだったのだが、やはり上手くいかなかった。当然だ。時間移動そのものはほぼ心配いらずになっているが、任務が少々リスキー過ぎる。過去を改変して、ただで済むとは思えない。そんな心配が滲み出てしまったのだろう。

「ああ」

淡白な冷徹男になってしまった幼馴染みの小さい声。まるで人と会話することに必要性を感じていないような、そんなボリュームの小ささだ。

「アルは優秀だもんね」
「…」
「言いたいことがあるなら言いなさいよ、アル」

ほんの少しだけ不服そうに眉根を寄せ、何も言わずに私から目を逸らす。アルはきっと、「その阿呆みたいなあだ名で呼ぶのはやめろ」と、そう言いたいのだろう。しかし私が彼をどう呼ぼうとメリットもデメリットもない。彼がどう思うのか、ということを除けば、どちらでもいい話なのだ。だからアルは何も言わない。そういう奴なのではなく、そういう奴になってしまった、のだ。

「あのさあ、アル。過去っていうのはね、すごくデリケートなんだよ。ちょっとしたことで今と未来が変わっちゃうんだから」
「それがどうした」
「だからさ、失敗は許されないわけ」
「…」
「それ以前に、過去ってさ、いじっていいものじゃないと思うんだよ」
「…何が言いたい」
「さあ?別に」

行くななんて言ったって、どうせあんたは完全無視するんでしょ。

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