neta | ナノ
 
「せんぱい」
「ん、黄瀬くん」
「卒業、しちゃうんスね」
「おめでとうは言ってくれないの?」
「俺、あんま、嬉しくないんで」
「えー?」
「先輩には嘘つきたくないんスよ。だから、せんぱい」
「なに?」
「行かないで」
「…うん。無理」
「知ってる」
「もう二度と会えないわけじゃないんだから。ね?」
「イヤっスよ。留年しちゃえばよかったのに。先輩がバカだったらよかったのに」
「ごめんねー、成績良くて」
「…先輩のばか」
「どっちなの」
「どっちもっスよ」
「試合いっぱい見に行ってあげるから」
「足りない」
「ええ…どうしろっていうのよ」
「ください」
「何を?」
「先輩。先輩の全部」
「私の全部って…具体的には?」
「くれるんスか」
「どうだろうね」
「はぐらかさないでほしいんスけど」
「そっちこそ」
「じゃあ、先輩、誰かとキスしたことあるっスか?」
「…もう高校卒業するのにそんな経験も無いなんて、ってばかにする気ですか」
「無いんスね」
「何で嬉しそうなの」
「先輩、ちゅーしましょ」
「は」
「先輩のファーストキスください」
「…黄瀬くんは何をくれるの?」
「何って、もうとっくにハートもってかれてるんで」
「押し売りか」
「せんぱい」
「なっ…なに、いや、近くない?」
「好きっス」
ちゅう。

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