10
サンジという王子様に手を引かれながら地上に出れば、そこには目を見開く光景が広がっていた。
私を捕えていた貴族の衛兵達は皆倒れ、城内は静まりかえっており、私は思わず歩を緩めてしまう。
これは全部サンジさんがやってくれたの?
そう思いサンジさんの顔を見上げると私の歩が遅くなったからかサンジさんもこちらを見ていて目が合う。
私の考えが分かったのかサンジさんはニコリと笑って言った。

「おれの仲間だよ」

そうか。サンジさんだけではないんだ。
こんな見ず知らずの私を助けようとしてくれた人が他にもいたんだ。
その事実に少し唇を噛む。
走って走って、城を抜ければ外には多分サンジさんの仲間が貴族を殴り飛ばした光景が目に入る。
腕が物凄く伸びたわ、あの人。
もしかして悪魔の実の能力者?
私初めて見た。
殴られた貴族は気を失い倒れたまま。
その様子を見ていた島民は貴族が倒れた瞬間、歓喜の声をあげた。
私も思わず立ち止まり、呆然とする。
手を引いてくれていたサンジさんも私が足を止めたから止まる。

もしかして、私は自由になれるの?
もうあんな暗くて冷たい場所に閉じ込められなくてすむの?

どうしよう、身体が震える。
嬉しい。こんなにも嬉しいことがあったかしら!
視界が歪んで頬を生暖かい涙が流れる。
両親を殺されて今まで楽しいことも嬉しいこともひとつとしてなかった。
それがこんな、まさかあの貴族から解放される時が来るだなんて。
サンジさんと繋がれていない方の手で目元を擦る。
するとその手も彼に捕まえられた。

「擦っては傷ついてしまう」

優しく涙を拭ってくれる暖かい手に、私の涙腺は留まることをしらないみたい。

「っ、ありがとう…っ!」





mae tugi

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