観戦

 2日目、バトルパート。
 1試合目はレイヴンテイルのクロヘビとラミアスケイルのトビーだ。トビーが仕掛けるも、クロヘビに瞬殺されてしまう。とっておきの秘密だと言って、3ヶ月前から片方の靴下を探してるのだと泣くトビー。

「くだんねー」
「まぁそう言わないの」

 クロヘビが胸元を指し、そこに手をやり気付くトビー。クロヘビがトビーへ手を差し伸べ、さもいい雰囲気かのように見えたが、彼はその靴下を容赦なく破り捨てた。

 静まり返る中、トビーの泣き声とレイヴンテイルの笑い声だけが響く。

「全く、毎年のことながら呆気ない試合は呆気ないわね。…なんだか可哀想な結末だけど」
「くく、辛辣だなぁ。分かるけど」

 靴下を破り捨てる云々はさておき、トビーとクロヘビの試合ったら呆気無さすぎてつまらないわ、だなんて頬杖ついて舞台を見下ろす。
 続いて二試合目はクワトロケロベロスのバッカス対フェアリーテイルAからエルフマンだ。

「バッカスかぁ、これは手強いわねぇ」
「サラ、彼とは知り合いだったね」
「ええ。たまに飲みに行くの」
「お酒好きですもんね」
「ふふ、そうなの」

 そうだ、大魔闘演武終わったら食事行かない?とユキノに誘いの声を掛けたら是非!といい返事を貰えたので、約束だと笑って。
 ヴィジョン越しに聞こえる、エルフマンとバッカスの声に意識を向ける。

『なあ、さっきの奴等みてーにオレらも賭けをしねぇか?』
『ム』
『おまえの姉ちゃんと妹、エレェ美人だよなァ。オレが勝ったら一晩貸してくれや。お前が勝ったら…そうだなァ』
『漢…』
『ア?』
『漢として許せん事があるぞ。猟犬。砕け散れ』

 怒りに燃えるエルフマンを前に、商談成立だとニヒルに笑うバッカス。思わず腕をさする。

「ドンマイだな。向こうの姉と妹は」
「これは、女としてはバッカスよりエルフマン応援したくなるわねぇ」

 低い声でそう落とせば、スティングに肩を抱かれる。何?と目を向ければ、安心しろと笑われるので。ん?と首を傾げながらも続きを待てば、

「もしああなっても、サラはオレが守るし。…まあオレが相手に負ける気なんてしないけどな!」

 自信満々に笑ったスティングに、眉を下げて笑ってしまう。女扱いされる擽ったさを誤魔化すように、スティングの頭をわしゃわしゃと撫でる。やめろと言う割に嬉しげなスティングに満足して手を離せば、ローグにじゃれ合うなと声を掛けられる。

「あら、ごめんなさい」
「…今回の試合、バッカスの勝利だろう」
「普通に考えるとそうねぇ。…あら」

 バッカスに押され続けているエルフマンは、そういえばと賭けのことを思い出す。

『オレが勝ったらおまえらのギルド名大会中クワトロパピーな』

「っふふ、仔犬…!」

 思わず笑ってしまうけれど、すぐにそれを潜めた。なぜなら、バッカスが酒を飲んだからだ。
 一瞬で1発を入れたバッカスは、己の手が血塗れなことに驚く。当たらないなら当ててもらえばいいと笑い煽るエルフマンに、バッカスは面白いと叫び攻撃を仕掛ける。

 もはや意地のぶつかり合い。結果は、バッカスの勝ちかと思われたがエルフマンの粘り勝ち。

 会場へ雄叫びが響く中、私は小さく拍手をした。だって、ミラやリサーナ――旧友が一晩だなんてアソビに使われるのは、嫌じゃない?


 続いての3試合目はフェアリーテイルBからミラジェーン、対するブルーペガサスからはリザーブ枠のジェニー。それはそれで、中々壮絶だった。なんでかグラビア対決が始まり更にはマニアックなお題が次々に出され、いろんな意味で歓声が上がったからだ。

「男性ってこういうの好きよね」
「…そう言われてもなんも言えんぞ」
「あらそう?」

 スティングやローグ、ルーファスたち男性陣を見ながらそう言うと、気まずそうに目を逸らしたローグ。そんな姿にからからと笑ってから、つまらなそうなスティングに目を向ける。

「つまらなそうね」
「べっつにー。これの何が楽しいのやら」
「そういうのが好きな人もいるのよ」
「…、」

 ちらりとサラを視界に入れ、キョトンとした顔と目が合ったスティング。
 オレが好きなのは、と脳内に浮かべた言葉を滑り落としそうになり、スティングは奥歯を噛み締めた。

「あら。ジェニーも中々狙うわね」

 最後の1回。負けた方が週刊ソーサラーでヌード掲載と案を出したジェニーに、ミラはシレッと同意する。良いのかそれでと思っていれば雰囲気が変わる。

『今までの流れに沿って賭けが成立したんだから、最後は力のぶつかり合いってことでいいのかしら』
『は?』

 ミラの綴る言葉が不穏な上に、ジェニーは脳内処理が追い付いていない。そしてミラが変身したのは、ミラジェーン・シュトリ。確かアレ、私が知る中で最強のサタンソウルだと思うんだけど。

 結果は、言うまでもなく瞬殺。圧勝。高らかに宣言された勝利に、呆気に取られた後大歓声。

『ごめんね。生まれたままのジェニー楽しみにしてるわね』
『いやぁ〜〜!』

 あーあー、と思わず笑ってしまう。
 まぁ、自分の蒔いた種だもの。それに、相手はミラ。ギルドのために頑張ってる今賭け事なんてしたら容赦ないに決まってるのに、無謀な賭けに出たんだから仕方ないわねぇ。

「大変そうねぇ、グラビアも」
「サラはやんねーの?」
「興味無いわね」
「ふぅん」

 少しガッカリしたような、ホッとしたような反応をするスティングにくすりと笑ってから、次の試合に目を向ける。


 大魔闘演武2日目。早くも最終試合が始まる。
 マーメイドヒールからはカグラ・ミカヅチ。対してセイバートゥースからはユキノ・アグリア。

「誰かさんのお陰で競技パートでは点数取れなかったからね。巻き返したいわね」
「クス」
「ケッ」
「いいえ。スティング様は不運だっただけ。乗り物の上での競技だと存じていれば…」

 思わず、競技の名前を聞いたらなんとなくでも分かりそうだけれど?と零せばスティングに睨まれる。

「うるせぇ。…お前がこのチームにいるって意味、分かるよな」
「セイバートゥースの名に恥じぬ戦いをし、必ずや勝利するという事です」

 ユキノとカグラ、美女対決だと盛り上がる観客の声を遠くに、舞台へ向かおうとするユキノに声を掛ける。

「いってらっしゃい。頑張って、ユキノ」
「はい」

 そして、賭けの商品にそれぞれの命を賭けようと言い出したユキノ。そこまで本気なのかとザワつく外野をスルーしつつ、難しいことを言うなぁと笑う。カグラ・ミカヅチは中々手強い。それを知っていての宣言。カグラは、それを呑んだ。

 そして始まる、カグラ対ユキノ。
 星霊魔導士であるユキノは黄道十二門であるピスケスやライブラを開門する。しかし、カグラはライブラの重力操作を臆することなく逃れて行く。そして、ユキノは13番目の門とやらを開門する。

 結果から言って、瞬殺だった。
 13番目の星霊であるオフィウクスを開門するものの、ソレを刀を抜くことも無く倒した。そして、目前に迫るカグラの刀。


「うそ…?」
「安い賭けをしたな」

 ――――人魚は時に虎を喰う


 どさりと倒れ込んだユキノに、カグラは命は預かったと告げる。それに対し涙ながらも返答をしたユキノ。そして、司会の試合終了の声と共に上がる歓声。

「あら。…大丈夫かしら」
「…っ、マーメイドの奴…強えな」

 ギリ、と奥歯を噛み締めるスティングを横目に試合を終えた舞台へ向かう。そして、へたり込み呆然と泣いているユキノに手を差し伸べる。

「ユキノ。…貴女が弱かった訳じゃないわ。……でも、あちらが上手だった。お疲れ様」
「っ、…はい」

 そうして、2日目の試合は終了した。

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