7年の月日

 X784年12月16日、天狼島。
 アクノロギアにより消滅。アクノロギアは再び姿を消した。その後、半年にわたり近海の調査を行ったが生存者は確認出来ず。



 そして、7年の月日が流れた。

「帰ってきたんだって」

 金髪の青年――スティングがそう言えば、隣に立つ黒髪の青年――ローグが何の話だと問う。そしてスティングがその答えを言おうと口を開くも、遮られてしまう。

「7年前に失踪したフェアリーテイルの主要メンバー、でしょう?」

 和らかな笑みを浮かべながら、鈴のような音色の声を落とした彼女。艷めく真紅の髪を攫うように風が吹き、髪を押さえる女性――サラ。

「興味無いな」

 素っ気なく落とされたローグの言葉を否定するように、スティングは嘘をつくなと笑う。

「あれ程憧れたナツさんだぜ?…実際懐かしいよな、7年前って言ったらオレらこんな小さくってよォ。あ!お前はガジルさん派だったな。コワかったよなー、ガジルさん。サラはエルザさんだっけ?」
「そうね」
「過去を引き摺るな、スティング。オレたちの行く道に奴等はいなかった」

 楽しげに過去を語ったスティングに、ローグは静かな言葉を落としていく。

「見つけたぞー!死ねぇーい!」

 そこに乱入して来たのは討伐対象ギルドの生き残りの人間。女だからと狙われたのだろう。矢が、サラ目掛けて飛んでくる。

 しかし。

「矢を…、食べ、え?」

 スティングはその矢をおもむろに片手で掴むと、食べ始めた。

「まさかコイツ…!」

 その先の言葉を言いかけたところで、自身の真横を通り過ぎて建物を貫通した光。男はボロボロ涙を零しへたり込む。そして、震える声を振り絞り彼等の名を残す。

「こ、こいつらだったのか…あのセイバートゥースの双竜、白竜のスティングと影竜のローグ。2人のドラゴンスレイヤー!……っそして、彼等とチームを組む 真紅の騎士《グルナ・ナイト》、サラ…!う、うわぁぁあぁあ!」

 悲鳴をあげながら慌てて逃げていく男。

「あら、仲間を置いていくの?」
「闇ギルドなど所詮そんなものだ」

 まあ仲間を置いて行くんだから程度の知れた人間だったってことね、なんて思いながら下に残る行き倒れた闇ギルドの人達を見下ろすサラ。すると、その後ろから聞き慣れた声。

「またハデにやりましたね、スティング君」
「ケロ」
「どこいってたんだ。レクター、フロッシュ」

 敬語でしっかり者の猫――レクターと、カエルの被り物をしたマイペースな猫――フロッシュだ。

「いえいえちょっと偵察的な〜。いや〜!これなら火竜や鉄竜…天竜にだって負けませんね
「フローもそう思う」
「だろ?」

 そうこう話している様子を横目に、私はフローに手を伸ばし抱き上げる。可愛いからつい、ってのもあるけど。どこか抜けてるフローが心配だから、よく抱っこして歩くのがお決まりになっているのだ。

「スティング君こそ最強のドラゴンスレイヤーですよ!ハイ!」
「今のオレなら絶対にナツさんに勝てると思うんだ。今度勝負しに行かね?ローグ、サラ」

 ええもちろんですよ!とスティングの言葉を肯定するレクター。

「興味無いな」

 抱き上げたフロッシュが、ローグの言葉にフローもー!と同意している。

「面白そうだけどパス。憧れは憧れのままでいたいのよねぇ。…ガッカリしたくない」
「ヒュウ、言うねぇ」

 私の馬鹿にしたような、煽るような言葉にスティングは口笛を鳴らす。

「スティングもその気持ち、無くはないでしょう?」
「まぁな」


 まぁ、そもそも私がフェアリーテイルの皆に勝てることなんて一生ないと思うんだけど。
 彼らは強く優しく、逞しいから。七年のブランクなんて、むしろ超えるべき壁としか思っていなさそう。ガッカリ、だなんて。フェアリーテイルの皆相手にしたことないんだよね。むしろしてみたいくらい。ああでも、時代に追いつく為に…

「修行くらいはしてそうだけど」
「?なぁに?」
「んー、何でもないよ。フロッシュ」


 ざわり。
 まるで何かの始まりを告げるような風が、サラの髪を揺らした。

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