打ち上げパーティ

 大魔闘演武から数日。城にて大魔闘演武打ち上げパーティーが開かれることとなり、参加者である私たちは招待されていた。

 そして、その前日。
 セイバートゥースのギルドにて。

「あれ。サラ?その髪と目は……」
「ええと。一応、サラ。本名はアイヴィ・ローザ。私、訳あって偽名でセイバートゥースにいたの」

 サラ・ミンディは魔法で変えていたカラーリングをすべて元に戻し、アイヴィ・ローザとしてスティングたちの前に立っていた。
 アイヴィ・ローザって、元フェアリーテイルの…サラがよく間違われてた…本人だったのか!?…なんて、ざわつくギルド。一足先に我に帰ったローグが、アイヴィに問いかける。

「訳、とは…?」
「んんと、マスターの逮捕の為、評議員から来てたの。マスター、実は裏で結構悪さしてたから」
「そんな」
「もちろん、ここでの生活もそれなりに楽しんでたんだけど。マスターも居なくなったしそろそろ戻って来いって言われてて……」

 ぎこちなくも眉を下げて真実を告げていくアイヴィの言葉に反応したのは、スティング。

「っ、じゃあ!俺との、関係は…っ?」
「…初めは、情報目的もあったよ。でも、あの時℃竄オかったのは本当だし、スティングに助けられたのも本当」
「っ!」
「今までちゃんと言葉にしなかったのは立場的に出来なかったから。沢山不安にさせたけど、もうお別れなんだ。ごめんね、利用しちゃって。私、今日中に荷物まとめて明日のパーティーが終わったら、出て行くから。…みんな、今までありがとうね」

 頭を下げたアイヴィに、皆言葉が出ない。
 スティングはぐしゃりと顔を歪めてから、混乱した様子で、勝手にしろと叫んでギルドを出て行ってしまった。

「あー、ごめんね。最後までこんなんで」
「サラ。いや、アイヴィ。お前は本当は、スティングの事が」
「いーの。スティングは被害者だからさ。私は、大丈夫だから」

 目を細めて笑ったアイヴィからは、まだまだスティングへの愛情が見て取れて。どうしてこんなにも不器用ですれ違っているのかと、密かにスティング達の恋を応援していたギルドメンバーは顔を歪めた。
 そうして、その日はぎこちないまま終わり。


 ◇ ◇ ◇


 翌日、パーティー。
 スティングがナツを探しながらガジルにお酒を誘う中、アイヴィは…。

「アイヴィー!」
「っはは、この姿では久しぶり。ルーシィ」
「えっと、サラさ…ん?」
「あ、ユキノ!ふふ、うん。サラであってるよ。訳あって姿変えてたけど、本当はアイヴィなの。改めて宜しくね」
「は、はい…」

 泣きながら抱き着いてくるルーシィをなだめながらそんな会話をしてると、ユキノとスティングたちの目が合った。
 それを見た私は、さも関係ないと言わんばかりの顔をして、そそくさとフェアリーテイルの他メンバーのところに向かう。

 あ!ラクサスさんと雷神衆発見!マスターもお元気そうで!なんて他愛ない事を話していたら、ユキノ争奪戦が始まってしまい城内はてんやわんや。

「懐かしいなあ、この空気」
「お前は混ざらねぇのか?アイヴィ」
「んー、見てるだけでいいかな。ドレスだし」
「っつか、お前そのドレス」

 意味深な目線を寄越され、言いたいことを理解したのですぐさま目を逸らす。

「最後のプレゼントだってローグ達に渡されて。中身見ずに受け取って着ようとしたら、これだったのよ。……ちなみに持ってきてたドレスは回収されたみたいで見当たらなくて」
「ややこしいことになってそーだな、お前ら」
「あ。バッカス」

 そう。私が今着てるのは、スティングとお揃い、みたいなデザインのドレスなのだ。恥ずかしいったらない。

「よー、雷の兄ちゃんと仲良いなぁお前」
「まあそこそこ?昔良く話してたの」
「まとわりついてたの間違いだろ」

 満更でもなかったと知ってるのでその態度は痛くも痒くも無いからね!なんて笑って、たまに居酒屋で出会っては恋愛相談してくれていたバッカスに肩に腕を回される。相変わらず常時酔ってるし距離感近いのよね、彼。近い、なんて腕から抜けていれば、首を傾げたバッカスに酒は?なんて言われる。

「んー、病み上がりだから控えてるの」
「へぇ。珍しいなー」

 そうこうしていれば、陛下からの挨拶。
 乱闘が静まり、王の言葉を待つ……が。

「皆の衆!楽にせよ!かーーっかっかっかっかぁ!オレが王様だーーっ!王様になったぞーーっ!」

 出てきのは王様から王冠と羽織を奪ったナツ。高笑いを上げるナツに、ラクサスと共に苦笑い。

「ナツったら…」
「あんの馬鹿…」

 くん、と後ろから腕を引かれる。
 結構な力で引かれたので危ないなと思いながら振り向けば、昨日酷い事言って傷付けた、彼。



「サラ」
「…スティング」

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