名を知る者

 バトルパート。2試合目までは比較的普通の試合だった。しかし、3試合目のフェアリーテイルBチームから出場のラクサスと、対するレイヴンテイルのアレクセイとの試合で一悶着あった。
 呆気なくやられてしまうラクサスに違和感を抱いていれば、試合開始から少し経ってモヤが晴れるようにその場が変わったのだ。

 唯一立っているラクサスと、倒れ込んでいるレイヴンのメンバー。明らかな不正行為の為レイヴンは失格となり、3年間参加禁止…とそれなりにお咎めがくだされていた。

 そして、本日ラストの試合。
 フェアリーテイルAのウェンディ・マーベル対ラミアスケイルからシェリア・ブレンティ。

「可愛い組み合わせね」

 でも、幼くても立派なギルドの魔道士。可愛いだけの女じゃないだろうけど、どんな試合になるのやら。

 そう思って見ていたが、時間が経つにつれて満身創痍になっていくウェンディに対し、シェリアは無傷で元気そうだ。否、怪我をする度自らの魔法で治癒しているそうだ。

 降参してもいいよ、なんて可愛らしく首を傾げるシェリアだが。

「私がここに立っていると言う事は、私にもギルドの為に戦う覚悟があるという事です。情けはいりません。私が倒れて動けなくなるまで 全力で来てください!お願いします!」

 しっかりと前を見据えて挑む少女に、驚いた。
 ウェンディ…強くなったなぁ、なんて。出会った頃はとても大人しくて、気弱な子だったから。

 小さくありながらも確かな意思を持つ拳がぶつかり合う戦いだったが、結果は時間切れから引き分けとなった。両チームに5ポイントずつ分配されるとのこと。
 シェリアとウェンディが握手をして友達となる、なんて感動的なところで3日目は終わった。


 ◇ ◇ ◇


 観戦も終わりお手洗いを済ませたしさあ皆と合流しようと歩いていたら、評議員に囲まれるミストガンの姿。いや、あれは多分、

「おー、こんな所におったのかね。ミストガンくん」
「ヤジマさん!?」
「ラハールくん。ミストガンくんが顔を隠スとる理由が分かったじゃろ」

 え、なんて困惑した声を出すラハールに、私も混ざり込む。

「あれ、ミストガン?」
「っ、サラ、さん…?」
「はい。こんにちは、ラハールさん。なんだか込み入った話ししてるみたいで。…ああ、評議員さん。この人ミストガンって言うのよ。あのジェラールと同じ顔を持って生まれてしまったから、大変みたいで。顔を隠してるらしいの」
「別人だと…!?」

 ちょっと苦しい言い訳かなぁとは思ったけど、ヤジマさんが庇う人だ。なんとなく察してしまった私も加勢していいだろう。
 エドラスの人間だと言う話をすれば、一応は納得したと言う彼ら。それらにお礼を言い、ジェラールはすみやかに立ち去る。

「(恩に着ます。ヤジマさん…そして、アイヴィ=j」
「(!…今回だけよ。…ジェラール=j」
「(マー坊に迷惑がかかる前に出ていくんじゃ)」
「(はい…大会が終わる頃には、必ず)」

 エルザとはちゃんと会っているのだろうか。まあ、フェアリーテイルチームな訳だから一度くらいはちゃんと話してるだろう。

 かつて、エルザを取り戻そうとする楽園の塔での出来事に遭遇している私なので。ジェラールのことは勝手に知り合いと思ってる。…向こうは、エルザの今の仲間≠ニしか思ってないだろうけど。

「それじゃあ、私もこれで失礼しますね」

 軽く頭を下げてからその場を立ち去る。
 結果的にスティングに遅いとぶつくさ言われてしまったが、今回にかんしては不可抗力だ。




 ミストガン≠ニサラの去っていく姿を見ながら、ラハールは考え込む。

「あれは本物だ。ここはヤジマさんの顔を立てておくが、逃しはしない。…それに彼女≠ェ肩を持つんだ。何か≠るんだろう。何より、彼女≠ヘ仕事に手を抜かないからな」

 なんて言うラハールに、ドランバルトはそうだなと頷く。

「ま、とりあえず報告待ちだな」
「ああ」



 流石にわかるさ。今≠ヘ逃すだけの何か≠ると。

 サラもとい本来の名をアイヴィ。彼女は、我々評議員の同僚――仲間なのだから。

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