眩い緋に憧れた

 3日目の競技パートは、フェアリーテイルAからはエルザが参加するみたいなので、セイバートゥースからは私が出させてもらう。

「さて、行って来ます」
「サラなら余裕だろうな。遊びすぎるなよ」
「どのような競技かまだ分かっておらんからな。気を抜くなよ」
「ふふ、分かってるわ」

 伏魔殿《パンデモニウム》。

 魔法具現体で現れた如何にもな神殿の中には百体のモンスターがおり、そのモンスターを倒してく訳なんだが、それらのモンスターは強さが五段階にランク分けられているらしい。
 Sクラスのモンスターは聖十大魔道といえど倒せる保証のないレベルの強さらしい。えげつないものを持ってきたものだ。

 私達参加者は、神殿に入る前に戦うモンスターの数を選択する。入ってしまえばその数を倒し切るまで出ることは不可能。しかしモンスターのランクはランダムで出てくるため、一体を選んでも五体を選んでもその中でSランクのモンスターが当たるかはわからないとの事。

「つまり、モンスターのクラスに関係なく撃破したモンスターの数でポイントが入る、のかしら?」
「はい。その通りでございます!」

 ルール説明もそこそこに、くじ引きで順番を決める。そして、トップバッターはフェアリーテイルAのエルザ。

「この競技、くじ運で全ての勝敗がつくと思っていたが……」
「くじ運で…?い、いやどうでしょう?戦う順番よりペース配分と状況判断の方が大切なゲームですよ」


「いや、これはもはやゲームにならん。
 100体全て私が相手する。挑戦権は、100だ」


 ざわつく周りの声など聞こえていないかのように、神殿に入って行く彼女。その背のなんと凛としたことか。血を流し、傷だらけになりながら。それでも体を動かすことを、剣を奮うことを決して諦めず。

 地に堕ちたはずの妖精が舞い踊る。

「エルザ…、いや、……これが、ティターニア…っ!」

 死ぬ気で喰らい付くその姿は、まさしく妖精女王《ティターニア》。
 眩しい程の強さ。それは、気高き女の、命の輝きだった。

『し、しし、信じられません…!なんと、たった1人で100体のモンスターを全滅させてしまったーーっ!これが7年前最強と言われていたギルドの真の力なのか…っ!?』

 彼女の命の強かさに、かつて憧れた緋色の眩しさに。なんだか涙が溢れ出しそうだった。勝手に揺らぐ視界を慌てて沈めて、沸き起こる歓声を遠くに目を閉じる。


 その後は協議の結果、残りのチームにも順位を付けることとなった。まあ、そうよね。このまま不参加退場だと不完全燃焼過ぎて面白く無いものね、私達。

 そこで用意されたのが、魔力測定器《マジックパワーファインダー》、通称MPF。

 この装置に魔力をぶつけることで、その一撃が数値として表示される。その数値が高い順に順位をつけるらしい。…久しぶり≠セなぁ、これ。

 挑戦する順番は先程引いたくじの結果通りやるらしい。うん、私は少し後の方だ。

 そうして、マーメイド、クワトロ、ブルーペガサス、レイヴン…と進んで、次はセイバー。私だ。今の所マーメイドの記録である365を抜けば一番になれるわけだけど、さてさてどうしてやろうか。

「ふふ、でもまぁ」

 ふ、と頬を上げ前を見据えて笑う。

「あ、サラの奴本気で遊ぶ≠ツもりだな」
「ああ、久しぶりに見たが…あの顔はそうだな」

 愉快そうなスティングと久しぶりに見るだなんて言うローグが、サラを見ながら笑う。

 両の手に魔力を貯めて、武器を召喚する。一撃が重い、確実に仕留めれる武器を。

「焔の緋《フレイム・カーディナル》」

 魔法陣から浮かび上がってきたそれを、構える。私の艶やかな緋色の輝く、ライフル《相棒》を。
 スコープを覗いて、獲物を捉えて。ライフルにありったけの魔力を込めて、笑う。

「『チャージ、満タン』」

 エルザの後では、如何にも盛り上げに欠ける戦い。そう、例え気の抜けるようなゲームだとしても。やるからには…遊ぶ≠ゥらには全力で楽しまなければ。

「『狙撃、ドウゾ』」

「炎焔の一撃《えんえんのいちげき》、SCHOTT!」

 銃口から弾が飛ぶ。そして目的に当たった、瞬間。


 ぶわり。


 火傷してしまいそうな、濃度の高い炎が舞い上がる。装置が壊れるのでは、なんて不安になるほどの熱い魔力。

『5417とてつもない数値です…』
「あ。数値上がってる。…ちょっとやりすぎたかな」

 それを上から見ていたスティングは、

「さすがサラだな。見てて気持ちが良い」

 ヒュウ、と口笛を吹き楽しげに笑った。そしてそれに対しローグはああ、なんて無愛想に頷いて。ミネルバは目に痛い色だと呟き目を細めていた。

 沸き起こる歓声の中、熱いなぁ、なんて言いながら銃を仕舞うサラ。そして、次はジュラ。聖十大魔道である彼は流石の実力。私よりも上の8000代。

「流石は聖十大魔道。敵わないね」
「ふむ、お主も中々だったが」
「ふふ、それは有り難いお言葉です」

 そして、いよいよ次はラスト。フェアリーテイルBのカナだ。彼女は元々威力のある魔法ではなかったはずだから、少しだけ心配。
 でも。そんな心配は不要とでも笑うように、カナはとんでもない魔力と共に最高記録を叩き出した。

「カンストって…!」

 唖然とした。強くなっていた彼女に。
 心底楽しげに魔法を使う彼女には、かつての、苦しそうな表情は見えない。

『競技パート。ワン・ツーフィニッシュ!もう誰もフェアリーテイルは止められないのか!?』


「止められないよ!なんてったって私達は、フェアリーテイルだからね!」

 嗚呼、何か答えを見つけたのね。カナ。



 大魔闘演武3日目。
 フェアリーテイルへの熱い歓声。完全にファンの心は、返り咲いたギルドへ釘付けだった。

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