開幕バトル・オブ・フェアリーテイル

 マグノリア全体で行う、収穫祭。それは年に一度のお祭り。ギルドとしては毎年、収穫祭に合わせてフェアリーテイル女子たちの中の美人コンテスト、通称ミスフェアリーテイルというイベントを行い盛り上げ要因として参加している。まあなにせこのギルドのメンバーは賑やかで騒がしいイベントが大好きなので。基本楽しくどんちゃん騒げれば何でも良いのだ。

 しかし。どうやら今年は雲行きが怪しいようで。
 ラクサス率いる雷神衆が、ミスフェアリーテイルの参加者である女子たちを石化させ人質とし、制限時間三時間で、最後に残った者が勝者≠ニいうルールで、バトル・オブ・フェアリーテイルを開催した。

 そうして。八十歳以上と石像の出入りを禁止する≠ニいう術式により参加出来ないマスターと…同じくなぜか参加出来ないナツ。
 それ以外のギルドメンバーはそれぞれ街に出てラクサスを探すものの、フリードの術式により仲間同士で戦い合うことになり倒れていく。
 そんな中、エバーグリーンやビックスロー、フリードに直接対戦した者もいたが、悔しくも惨敗。ギルドの中でも上位の戦力を持ちS級のラクサスが認める、雷神衆というだけはある。

 めくるめく、変わり行く戦場。

 残り時間と残りの人数と。照らし合わせて、残りのメンバーがなぜか外に出られないナツとガジルなのだと気付いたマスターは諦めかけてしまう。しかし、そんなこと毛程も思っていないナツは、「燃やしたら溶けんじゃね?」と石化したエルザを復活させようと、その炎でエルザの体を炙り始めた。

 すると。

 パキ。

「しまったーーー!!割れたー!!ノリだノリ!!」
「馬鹿野郎!!そんなんでくっつくか!?オレの鉄をてめぇの炎で溶かして溶接するんだ!!」
「貴様らーーっ!!」

 慌てふためく三人+一匹をおいて、ヒビは止まらない。パキパキと壊れていき、ナツが半泣きで謝り倒していると。
 バギィン。一際大きな音と同時。

「熱い……お前か、ナツ。何をするかーー!!」
「ぐほぉ!!」
「ギヒャ!?」

 エルザが、目を覚ました。
 と、同時にナツをぶん殴りガジルが巻き添えを食っている。喜ぶマスターやハッピーに、右眼の義眼のおかげで助かったのだろうと推測するエルザ。どうやら、今までの状況は耳に聞こえていたようで、話が早い。

 エルザが目を覚ましたタイミングで増えた残りの人数が、もう二つほど、増えた。

「増えた」
「誰だ!!?」
「皆…石のままじゃ、一体……」

 思い当たらない様子の皆に、唯一誰か分かったエルザは、小さく笑った。

「どうやら、アイツらも参戦を決めたようだな」



「……ん?折角収穫祭に合わせて帰ってきたのに。この術式は、フリードかい?……なんだか、不穏な気配だねぇ」
「……ああ」

 フェアリーテイル、もう二人の最強候補。
 ミストガン、マーリンの参戦だ。


 □ □ □



 復活したエルザが早速エバーグリーンを倒したことで、石化されていた女子たちが復活し。こちら側の参加者が一気に増えた。
 しかし、それを喜ぶ間もなくマグノリアの街の空に神鳴殿≠ェ設置されてしまう。その報告がラクサス直々に伝達され、怒り心頭となったマスターは、街の人間も巻き込むのか!!と叫んだと思うと、心臓を抑え……発作で倒れてしまった。
 そして、目を覚ました皆が外に出てラクリマを見上げている、タイミング。


「……ん?あれは…」

 街に足を運び入れた瞬間に術式で知らされた現状、バトル・オブ・フェアリーテイル≠フ大まかなルールと残り人数を頭に叩き込んだマーリンとミストガンは、ひとまず対ラクサスへの戦力を分散させるために別行動をしていた。
 ……マーリンは、ラクサスが何処にいるのか大凡検討が着いていた。なので、居るであろう場所をミストガンに伝え、そちらは任せることにして、自身はギルドの様子を見に向かっていた。この試合に参加しないマスターが心配だったので、ひとまずギルドに現状把握へ向かったのだ。

 ギルド付近に来ていた彼女は、空高くに見えるラクリマ≠見上げ、眉を顰める。

「何だい?あんなモノいつの間に、」

 ソレが何かを考えていれば。

 ギルドの二階。屋上から、誰かがラクリマを攻撃した。見事ソレに命中し、ソレが砕ける。この調子で全て!と思った数秒後。二階の中の誰か、ラクリマへ攻撃した者の方へ雷が落ちてきた。

「生体リンク魔法……!壊させない気か!」

 慌ててギルドに入れば、メインの酒場には誰も居らず。先ほど人影の見えた屋上に駆ければ、コゲてしまってきるビスカを囲む皆。

「ちょっと、大丈夫かい?……これは、何事だい?」
「マーリン!!」

 それから、現状を聞いた。
 バトル・オブ・フェアリーテイルのこと、ラクリマのこと、マスターのこと、ラクサスのこと。

「なるほど、ね。よし分かった、早いとこアイツを潰そう。……街を、探すか」
「ああ!このままじゃ街の人まで危ない!」
「ラクサスをやるしかない!行くよ!」
「あたし…出来るだけ街の人避難させてみる!!」
「雷神衆もまだ二人いる!気を付けるんだよ!!」


 走っていく女子たちを目に、オレも参加させろと暴れるナツ。マーリンは、そんな彼に落ち着けと声を掛ける。

「ンだよマーリン!!止めんな!」
「止めやしないさ。落ち着けと言ってるんだ。……レビィ、ここの術式解けるな?これはようは文字魔法の一種だ、得意だろう?」

 そう言ってやれば、はっと何かに気付くレビィ。

「時間は掛かる、けど、なんとか…いけるかもしれない!」
「ふ。ああ、よし。大丈夫だね。ここは任せるよ。そんな訳で、二人共!焦れる気持ちは分かるけど、今は体力温存しときな。スグ、参加出来るさ」

 グッと拳を握りしめ意気込むレビィの様子に笑って、任せるよと頭を撫でてから、マーリンはナツとガジルに指を向けて。
 そうして。

「さて。アタシはひとまず、この厄介な術式を作ってるフリードを潰したいとこだね。………二人共、先に伝えとく」
「「あ?」」
「きっと、ラクサスはカルディア大聖堂≠ノ居る。……さっさと、来なよ!」

 えっっと驚く三人の声を発する彼らに背を向けて、時間が惜しいと言わんばかりに走り出した。



「(あのバカが何処に居るかなんて、アタシにとっちゃ分かりやすい。……こんな事をしてるアイツが、行くとこなんて。きっと、………いや)

今は、アイツをぶん殴ることだけ考えようかね」

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