妄想【三年風丸と二年宮坂】



※ちょっとホラー



考えても考えてもどうしても陸上部に風丸さんがいないことに納得出来なかった。上辺だけ分かりましたと言って心では全く分からない。一年の頃より激しく風丸さんにぶつからなくなったけど、僕のもやもやとした霧は晴れない。むしろ深まっていく。
国語の時間に源氏物語をやった。先生の話そっちのけで資料集を眺めていた。源氏物語のページで六条の御安所の話に目がいった。嫉妬に狂った御安所が生霊となって正妻の葵の上を呪う話だ。僕も生霊になりそうだと正直思った。心の中で風丸さんを想う気持ちの蓄積が澱み、ヘドロのような色をして喉を出る。僕の生霊が誕生し、無意識のうちに風丸さんにとりまとうかもしれない。宮坂はペンをくるくると回しながら、そんな想像をしていたら、先生に当てられた。驚いてペンを落とした。




「風丸さん」
校門前で部活帰りの風丸に声をかける。
「ん、宮坂か。どうした?なんだか顔色悪いな」
風丸は心配そうに言った。
「やだなあ、顔色悪くさせたのは風丸さんのせいじゃないですか」
笑いながら少しずつ風丸に近付く。その怪しげな雰囲気に風丸は一歩下がった。
「オレのせい…?」
「そうですよ。風丸さんがサッカーに夢中になればなるほど僕の顔色は黒く汚くなっていく。綺麗に染まればよかったのに僕はそれが出来ないらしいんです。今日はとうとう風丸さんに会えるくらいまで成長したんですよ」
ジリジリと近付く宮坂に後退りする風丸。辺りの暗さに飲み込まれそうだった。
「どうしたんだよ、お前…怖いぞ」
顔がひきつって声の音程もおかしくなる。

「一緒に黒くなりましょうよ風丸さん」
そこに風丸が知る宮坂はどこにもいなかった。








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そんな想像しちゃった宮坂




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