これからはなにをしようとあなたの自由です。
鎖は壊れたのです。
頭に何度同じ情報を流すのだろう。僕は見えない目で必死に現実を捉えようとあがいてる。見えなくなったのは、不本意でもなくて実は本意かもと気付くのは少し後の話。今は不本意だ。
目以外で状況を判断するのは容易くない。けれど、気配だけはあらかじめ生まれた頃から人より敏感だった。
「きた」
奴がきた。見えなくても鳥肌が立つ。僕は逃げる。隠れる。反対方向に逃げているのか隠れているか分からない。
鳥肌が立たないところまではきたようだ。
ろれつの回らない奴は鳴き声でしかない。気持ち悪い、この世の汚いものをちょっとずつくっつけた色を帯びている。耳が悪くなる。これ以上、なにも失いたくない。だから嵐が去るまで待たねばならない。じっと雨風の音に怯えるように。
一つの大きな音がした。奴の音ではない。まっすぐにのびる。
「消えた…?」
よどんだ空気が感じられない。ヒリヒリしていた感覚がない。おかしい。奴がこんな何も残さないで、消えるわけない。どういうことだろう。
「君だね、光が見えない子は」
ここで冒頭に戻る。
奴でない光が現われた。
光というのはもっと先で分かるけれど、ネームだ。
光の見えない僕と光の関係は大きな音とともに始まったんだ。
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