赤い林檎にみせられて【白雪パロ】3



※2の続きです






「ようやく家に着いたー。あー重たかったー」

晴矢はドサッと背負っていたリュックを下した。

「私も疲れたな。晴矢、肩揉んでくれ」

「オマエエエエ!!オレこそ揉んでほしいわあああ!!!」

晴矢と風介がギャアギャア騒いでいると、台所から悲鳴が聞こえた。二人はびっくりして動きが固まった。チャンスウが深刻そうな顔をし、二人に告げた。

「悲劇です。今日の夕飯がありません」
「……は?」

三人の間に沈黙が流れる。夕飯がない。夕飯を楽しみに働いているのにない。すると、寝室の方からグウーとお腹の鳴る音がする。お互いに顔を合わせた。この家には三人しかいない。
会話を交わさないまま、手をつないで恐る恐る寝室に向かった。ドアをゆっくりと開くと、三人のベットにそれはそれは美しい人形のような女の子が眠っていた。晴矢を先頭に起こさないように忍び足で近づく。白い肌に赤い唇から吐息が漏れ、麦のような綺麗な金色の髪が少女の僅かな動きに反応する。
初めてこんなにドキドキする。晴矢は無意識に少女に手が伸びた。それは他の二人も同じだったようで晴矢の両サイドから手が出てびっくりした。

「お前らさっきまでオレの後ろに隠れていたくせに」
「貴様にこの子を触れさせたくてなくてな」
「なっ…オレは別に!!」

「ここは私が起こした方がよいかと思いますよ。この中では一番イケメンですからね」

「「チャンスウ!?」」

小声で話していると、またグウーとお腹の鳴る大きな音がした。三人は目をぱちくりさせて少女をみた。この子からだ。すると少女は目をこすり、体を起こした。

「やあ、こんばんは。寝起きで失礼。少しばかりソファを借りさせてもらった。先ほど理解しがたい歌のようなもので起きたのだが、あれは何だったのだい?恐ろしい呪文のようだったから眠ったふりをしていたのだが、違ったようだね。んと…小人さんであっているよね」

照美がべらべらとしゃべっている間、三人はぽかんと口を開けていた。
歌のようなもの?呪文?…もしかして…!!ようやく意味がわかったらしい晴矢が後ろに隠れた風介をみると声に出さないように必死で笑いをこらえていた。

「風介、もう笑えよ」
「そ、そうかい?じゃあ遠慮なく…フフッ…ハハハハ!!!」
風介は床をバンバンと叩きながら笑い始めた。横にいたチャンスウも柱に腕をついて声に出さず笑っている。こいつらめ…と晴矢はため息をこぼしながら照美を見上げた。そんなことよりつっこむところがある。

「お前、どこからきた。勝手にオレたちの家に入って寝ているとはどんな身分だ」
「この国の姫だ。もっとも女ではないがね」

クスッとせせら笑った照美に、晴矢は耳を疑った。
姫ということは姿、雰囲気からよく分かることだ。しかし女ではないといったか?これほどの美少女でありながら、女じゃなくてつまり男、まさかそんな…。

「うそだろ?」

照美はベットの上で足を組み、髪をさらりと払いのけた。

「本当だよ。さて君たちは私の秘密を知ってしまった。この秘密はね、国家の最重要機密であって他言無用だ。しゃべれば即殺されてしまう」

三人はごくりと唾を呑んだ。なぜだか寒気がする。チャンスウが勇気を出して一歩前に出た。

「でも、勝手にしゃべったのは姫さんのほうでしょう」

「そうだね、しかし私が言っていないといえばどうかな?悲惨なストーリーくらいは簡単に作ることができるよ」

美しい人には棘があるという。よく見れば姫の目は深い赤だ。この瞳と合ってしまったらもう逃れられないだろう。

その日から俺たちは4人で暮らすことになった。






……Continue






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ぐだってきたので区切ります


20120406





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