「何もあなたは覚えていないんでしょう?」
薄暗い部屋のなかで宮坂の声がよく響く。両手両足を縛られて、風丸は宮坂の綺麗なくるぶしを見ていた。口の中には血の味がまだ微かに残っている。喋ろうとすると吐きそうなので、口を開けることができない。
「風丸さんは何も悪くないんです」
泣きそうなんだ。こらえた声に誘われて上を見上げた。冷たいものが額に当たる。
「僕が悪かったんです。だからこれで最後にしましょう?」
宮坂は小さなランプに明かりをつけた。宮坂の顔は目が真っ赤でだいぶ疲れた顔をしている。
誰のせいだ。こうしたのは。
宮坂は上着を脱ぎベルトを取った。ごくりと唾を飲み込んだ。華奢な宮坂の体中に無数の絆創膏。
「風丸さんに会うたびに傷つきました。同時に回復しました。もうこれって禁断症状みたい」
風丸はプチプチと風丸のワイシャツのボタンを外した。風丸が嫌がって身体を動かすと肩を強く押さえつけられた。逃げられない。誰のせいだ。宮坂がこんな風にしたのは。
露になった胸に宮坂は手をそっと触れた。冷たくて身体がビクッと反応する。
「ごめんなさい、冷たくて。でもこれから熱くしてくれるんでしょう?」
喋りが上下に揺れて不安定だ。
宮坂は風丸の目線でみえるところに座り、ズボンを下げて自分のものをだした。
風丸はサッと反対方向を向いた。
「か、ぜまるさあぁんんぁ…あっ!」
クチュクチュといじくり回す音がする。こんなの耳のレイプじゃないか。宮坂があえぐたび、音がよく聞こえるたびにドクンドクンと下半身はうずいた。
「こおっちみてようう…ぅあぁあ…!かぜぇまるさ…あぁんあっ」
宮坂の手はよく動いた。処理はいつもしているから慣れている。けれど、風丸さんが自分の恥ずかしいあえぎを、いじり回すことで出る音を、それだけでさらに加速していった。手についたぬるっとしたものをちょっと舐めて、見てくれない風丸の胸を再び触った。
「こんなにぃ…熱くなったよ…!ねぇ、風丸さんの大きいのほしいなあ」
ドクンドクンと早く打つ血流におさえきれない。宮坂はわかったようでクスリと笑ってするすると両手両足を解放した。ずるっと起き上がって、宮坂を押し倒しそのまま唇を奪った。柔らかい唇にこちらが吸われて気分になる。鉄の味を押し付けようと、舌は口の中に入り舌を絡ませた。
「んっはあ…!風丸さんにがいよう…」
宮坂が隙をついて苦情をのべた。
「当たり前だ。俺たちの愛だからな」
先程より舌を動かし、そして手は下へと伸びていく。
「んんあっ!」
風丸の手はべちゃくちゃになってる宮坂の部分を触った。こんなにも汚して、こんなにも俺を欲してくれて。
すると射精がびちゃっと風丸の手についた。風丸が舐めると、宮坂は恥ずかしそうに赤らめた。ああ、今日もまた止まらないだろう。
仕方ないのだ、
何も覚えていない俺と全部僕のせいの宮坂だから。
20120429
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