今を感じて【照吹】





※付き合ってる!吹雪士郎おたおめ!






ふわっともっと上空から飛んできたかのような照美のジャンプに吹雪はつい見とれてしまう。
たった階段を数段飛ばして下りただけなのに、所々の仕草が様になる。長い髪の毛は綺麗な金の糸のようで、僕が中世の貴族ならこのちょっとした日常風景すら絵を描かせたに違いない。
「吹雪くん、おまたせ」
息が乱れてるのを落ち着かせながら、走ってきて額に髪の毛が数本くっついたのを払っている。背が高く美しい彼はきっとまた道中でナンパされたのかもしれない。けれど彼はさっさと全部断ってここまで走ってきたのだろう。
それくらい僕が好きだと自惚れていたい。今日ぐらいは。
「ううん、急がせてごめんね。そろそろライトアップ始まるみたいだから…」
僕は彼の手を引いて、待ちあわせ近くの雑居ビルへと歩いていく。階段を上りながら、彼の手がじんわり汗をかいていることが伝わって少し緊張してきた。
「吹雪くん、今日は本当にあえて嬉しいよ」
「ーーこちらこそ。なかなか会おうと思っても会えなかったけれどさ、」
ようやく上がりきったその先には夜の都会のビルが建ち並ぶ風景が広がっている。彼の手を離して腕時計をちらりとみて僕は前へと歩いていく。
「あっ、そろそろだよ!」
そういった瞬間、僕の目の前がパッと一斉に明るくなった。ライトアップされた周りの樹木のせいだ。約40万個のLEDがただの夜景が一気に華やいだ。彼の顔を見るとすごく感動した表情をして口が開いたままだ。
「ーーねえ、綺麗でしょう?ここ穴場なんだ」
「うん、綺麗だよ。吹雪くん」
カツンカツンと彼の靴がコンクリートに当たりよく響いた。
近付く彼に僕はドキリとした。ああ本当にこの人は今目の前にいるんだ。そして僕のことが好きなんだろう。
彼の耳と頬が少し赤いのは寒いせいじゃないはずだ。
「誕生日おめでとう。吹雪くん」
「ありがとう。照美くん」
彼の伸ばした指先は僕の横髪から後頭部へと移動して唇はどちらともなく近付けてキスをしたのだった。




20211222






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