記念日【大人円冬】





※結婚してる
お題【「あい」を教えて】




人がいない家に帰るのが好きじゃないことをはっきりと伝えたのはいつだったろうか。
パチンとリビングの明かりをつけてただいまと誰もいないリビングに向かって呟いた。もう慣れている。私が選んでこの生活をしている。
本当は怖くてたまらないはずなのに、棚の上にある結婚式の写真を見るとあることを思い出すのだ。
「永遠の愛を誓うか……」
冬花はぼそりと呟く。プロポーズされた時に最初すぐには返事が出来なかった。その理由が自分でも分からないでいたら、マモルくんが答えを教えてくれた。
「永遠に四六時中オレはフユッペの傍にはいることは出来ない。本当にそれは申し訳ない。だけどさ、永遠の愛ってさ、なにもずっと傍にいることだけじゃないんだと思うんだ。フユッペが両親を想っていることもそれも永遠だろ。だからさ、オレはフユッペを……冬花をずっと愛してるって約束をしたい」
そこでようやく自分が不安だったことが分かった。
ずっと傍にいてくれると信じて疑わなかった幼い頃の自分に打ちのめされたことをまた起こるのではないかと怖かったのだ。結婚して傍にいても急に一人になるかもしれない。マモルくんのことは好きだったし結婚したいとも思った。だけどやっぱりまだあの恐怖がどこかでぴったりとこびりついて離れない。
そんな冬花のことを思ったのか、マモルくんはあることを提案したのだ。
ーー結婚記念日にはその約束の花束を毎年渡すよ!

「今年はやっぱり無理かな」
冬花はため息こぼしながらキッチンに向かうとドタバタとすごい音が玄関から聞こえてきた。驚いて急いで玄関に向かうとめちゃくちゃ髪が乱れて、着ている服もぐちゃぐちゃになっているマモルくんがいた。
「っハアハア……ご、ごめん遅くなった!」
左手には大きな花束が見えた。
「もう、今年も大きな花束だね」
冬花はさっきまでのどんよりとした気持ちが吹き飛んで微笑んだ。
また今年も新しい愛を渡してくれる。永遠のものではないけれど、そこにある愛はきっと今年も私の大好きなものだ。


20211220




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