曲が生まれる時に【勇圭】



輝いた世界に立てるのは勇人のおかげだよと伝えると彼はすごく変な顔をした。
「お前が元々輝いているからじゃねえか?それ」
「え、ああ……まあそうなのか?」
確かに今は応援に応えようと輝けるように努力はしている。しかし元々と言われるとそれは違う気がする。勇人に会ったはじめの頃は、自分は泥にまみれて足下がおぼつかず世界もずっと灰色でこのまま生きていくのだろうと思っていた。
「いや、オレは輝いていないさ。輝いていたのは勇人の方さ。オレはその光によって輝いたまでに過ぎない。勇人、オレが輝いているように思えるのは勇人のせいだ」
ふと窓からみえるクリスマスの飾りをされた大きな木に目がとまる。オレはただ勇人によって装飾されて輝いたまでだ。あの木のように。装飾されなかったら目にもとまらないのだろう。
圭吾は微笑んで勇人の肩に頭を傾けた。
「だからずっと隣にいろよな。オレのためにも」
「ーーほんとお前は……まあいいか。お前といると退屈しないから曲がまた生まれるよ」
勇人は傾けた圭吾の頭をグイと押し返して、持ってきていたギターへと手を取った。
オレは不服そうな顔をしてイスに座り直して、ギターを弾きながら歌う勇人を見つめた。
「……それって今必要だった?」
せっかくオレがいい感じのこと言ったのに、それを避けてまですることだったのだろうか。言いたくなる気持ちは抑えられないし本当ならもっとーー。
「必要だろ。お前がそんな可愛いむくれた顔見られるから。ーーあんなすぐに手を出しそうになること言いやがって……」
ジャンと鳴らした音はドキリとした気持ちに重なって不思議な気持ち良さが重なって、イスから立ち上がってそしてまた座った。
「そ、そうか……」
ニヤニヤが止まらない顔を圭吾は片手で隠したのだった。



20211219





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