高揚したせい【ひいあい】





今までだったら自分も好きな色に変えながらペンライト振って、うちわを持ってアイドルの光を浴びにいっていた側だった。
「ほんとーーに!らぶーい!みんな大好き!」
ライブをする時は勿論緊張するし、ファンの皆をどうやったら楽しませるかっていつも悩んだり、MCやフリが頭から抜けたりする。それでも楽しくてやめられない。いつまでも続けばいいとさえ願う程、愛がたくさん溢れているこのステージが好きだ。
「藍良、僕も藍良が好きだ」
ドキッとして隣をみるとめちゃくちゃ真剣な顔をしている一彩がいた。
「え、あっ、ええ!?」
今言うこと!?というかステージ上で?!と藍良がびっくりしていると、一彩は今度はステージへと身体の向きを変えた。
「ーー勿論僕も皆が好きで、このとても胸躍る感覚がたまらない。きっと藍良のいう愛がここに沢山あるからなんだろうね。故郷いたら知らなかったこの高揚感……本当にみんなありがとう!」
会場からはワーッと歓声が一気に溢れて、次の曲のイントロが流れ始めた。きっとMCの1つだと先程の公開告白のような一言を引きずりながら藍良は歌い踊った。
 
ステージから降りてすぐに一彩の手を取ってちょっときてと人があまり通らない通路へと連れて行った。
「どうしたんだい?藍良」
「ーーッ!どうしたんだい?じゃなくてさーー!!なんでいきなり好きだとかいうの?!めっちゃくちゃビックリして、危なく歌詞間違えそうだったじゃん!」
藍良が腰に手を当てて起こっているとまだ一彩は首を傾げている。
「歌詞を間違えそうになることと、僕の告白が関係あるのかい?」
「ーー大アリだよぉ……。なんで、なんで分かんないの。てかあんな真剣な顔して言わなくてもいいじゃん!?おれ、だってさ、その……」
下を向いて口から出そうになった言葉に赤くなった。きっと一彩の『好き』はそういう意味で言ったんじゃない。友愛だとか親愛だとかそういう意味だろう。でもおれの今言いかけた言葉の意味は、いつも使っている『らぶい』とは違う意味なんだと自分でも分かっている。
すると、一彩は藍良の両手を手にとりあの時と同じ真剣な表情をした。
「……藍良がすごく幸せそうな顔をしてみんなのことを大好きだといった時に、僕も伝えたくなったんだ。僕だって藍良が好きで、誰よりも好きだと言いたくなった。ーー迷惑だったらすまなかった」
ライブ直後で二人ともまだ汗が引かない。手もまだ熱くてじわりと滑る感じもする。藍良は唾を飲み込んだ。
きっと自分が真っ先に疑ってしまった。一彩は、ちゃんとおれと同じ意味で言っている。
「め、迷惑じゃない……ごめん、ありがとう。おれもーーーー」
好きだと言う前に繋いだ手を引き寄せられて抱き締められた。
言葉より先に伝わってきた鼓動の速さは、ライブ直後のせいだとは思わなかった。



20211218





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