破れても残るから捨てられない【創作】



破れた紙をまとめてゴミ箱に入れる。何しているんだろうと思いながらの事務作業だ。
何かがあったわけじゃない、ただ久々にテレビからきこえた声になんとなく気持ちが引きずられている。ずっと昔に破れたものを何度も捨てたと思っているのに、どうしても手の届かない身体の一部にくっついている。
「やっぱあの芸能人、人気出たね」
「……そうですね」
上司とのくだらない世間話も流せずにいる。あの芸能人、あのアーティストのことを私は知っている。
一人で寒い中タバコを吸いながら、早く気持ちが寒さと白い煙に溶けてなくなれと祈った。


20211214




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