思い込み【蘭マサ】



こういった場面になんで出会ってしまうのだろうか。
「好きです!付き合って下さい!」
ちらりと壁越しに聞こえてくる声には見覚えがある。確かクラスで可愛いと人気の女子だったはずだ。
「すまない。付き合うことはできない」
返事の声は馴染みのあるセンパイの声だ。悩むこともなく断っている。それもそのはずだ。センパイと告白した女子に接点はない。
女の子は諦めずにもう一度問いかけた。
「……何故ですか?私じゃセンパイにふさわしくないとかですか?サッカーのマネージャーとかでもないし……でもセンパイを想う気持ちは誰にも負けないと思うんです!」
聞いているだけで辛くなっていく。真剣かどうか、負けないかなんてオレにさえわかる。彼女は別にそこまでセンパイを好きじゃないのだ。ただサッカー部の格好いい彼女という称号が欲しいのだ。
この前聞こえてしまった女子の会話から事情を把握していた。
センパイはそうかと呟いてから優しい声が聞こえてきた。
「ごめんな……オレを一番想ってくれるヤツは他にもいるって知っているんだ。アイツはそう思ってないかもしれないけど」
そういうと走る音が近づいてきて、狩屋は息を潜めて姿を隠した。
見えたのは泣いてもいない悔しそうな顔している女の子だった。

「狩屋、もういいぞーー」
センパイから声をかけられてそっと姿を表すと、霧野は嬉しそうな顔をしていた。
「な、なんでそんな嬉しそうな顔してるんですか?!」
狩屋が怒ると霧野はいった。
「狩屋が自分のことだって少しは思ってくれたんだなと嬉しくてさ、さっきの」
馬鹿!というとセンパイはますます笑っていた。 




20211206




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