安心の眠りを【天城兄弟】





※故郷捏造
カプ要素なし






「兄さん、一緒に寝ていい?」
パチパチと暖房機の火花の音と共にオレの部屋に現れたのはまだまだ小さい一彩だった。
「うん、一緒に寝よう」
オレはゆっくりと読んでいた本を閉じて寝床へと向かうと、一彩は嬉しそうに走り寄って先に毛布の中へと潜り込んだ。
オレも同じように横になると一彩が近付いてくる。
「あったかいね、兄さんは」
「お前の方が温かいんだよ」
オレがギュッと一彩を抱き締めると、一彩はすごく嬉しそうな顔をしてオレも嬉しくなった。
「兄さん、あのね、僕ね……」
「うんうん……」
瞼を開けたり閉じたりとしながら、話したことは外から怖い音がして眠れなかったと一彩は言っていた。
当時のオレにはそれをどうにかする方法がなく、ただ一彩からその音から注意を逸らすことしか思い付かなった。燐音が頭を撫でているうちに一彩はすぐに寝てしまった。
 
*** 
 
「あ?弟クン?」
夜遅くまで仕事をして寮に戻ると、一彩が起きていた。共有スペースでなにやら本を読んでいたようだ。
「あ、兄さん。おかえりなさい。こんな時間まで仕事なんだね」
「あーーまーーうん。というか弟クンはどうしてここにいる?もうそろそろ日付変わる頃だし、本を読むなら寮室でもいいだろう」
一彩はパタンと本を閉じて立ち上がってそれから腕組みをして考えているポーズをした。
「……フムそうだね、どうしてここで読んでいたのだろう?」
「自分でも分からないのかよ……」
呆れながら燐音は自分の部屋に戻ろうとすると、兄さん、と後ろから声をかけられた。
「兄さんおやすみなさい」
「ーー弟クンもおやすみ」
振り返らずに手を振りながら、口元は緩むと昔の記憶が思い返された。
きっと一彩はオレのことを待っていたのだ。あの頃のように寝る前にただおやすみなさいと一言いってほしかったのだろう。
「まだまだ可愛げのある弟クンだよ……」
夜遅くまでしていた仕事の疲れが吹き飛んだ気がした。




20211204




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