反省のお湯【奏純】







喧嘩するほど仲が良いとはいうけれど、オレたちも同じなんだろうか。
純哉はバスタブに浸かって怒っていた感情が解きほぐされながら、俗説がふっと頭に浮かんだ。
湯船に溶かした入浴剤の良い匂いが後悔の念の泡を作っていく。あんなこと言うつもり無かったし、咄嗟に勢いで出た言葉だった。奏はすごく傷付いた顔をして言い返すことをしなかった。
ぱしゃりと音を立てて腕を上げて自分の手を見た。
「アイツの手を握ってやれたら良かったのに」
オレはいつまで経っても子どもで、それなのにアイツより大人だと思ってしまう。
だからアイツが自分より一歩先に進んでいると分かると焦るし、イライラしてしまう。いつの日か置いていかれるのではとさえ、不安になって泣きそうになる。
「明日は…………意地を張らずにちゃんと謝らなくちゃ」
今日は謝ることもせず逃げてしまったし、自分自身の方が辛いと思ってる。
辛いのは奏の方だ。
身体を起こして水面が一気揺れて湯気が立つ。自分の嫌な部分、汚い部分はお湯で流れていたらいいな。
純哉はバスタブから出てシャワーを浴びて浴室から出たのだった。



20211203





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