いい肉の日【トラシグ】






今日は1日トラシグとしてのロケの仕事だった。
休憩中、ロケバスに忘れ物を取りに行くと奏がスマートフォンを真剣に眺めていた。
「ん、奏、どうした?そんな真剣に見つめて……」
純哉は声を掛けたが、気付いていないようでこちらを見ない。何かあったのかと奏の肩を叩くとワッ!と大きな声を出した。
「び、びっくりしたーー?!」
「や、こっちこそびっくりしたぞ?!声掛けたのに全然反応しないから、何したんだろうって」
純哉は胸を抑えながら聞くと、奏は目をキラキラとさせた。それはとてもとても輝いている。
「あのね、今日はいい肉の日なんだって!」
「え、ああ……語呂合わせ的なやつか」
「うん!!いい肉の日なんだよ!!」
いや、だからなんだよと純哉は突っ込もうとしたが多分頭の中は肉でいっぱいだろう。そういう顔をしている。
「ーーまあ、良かったな奏。とにかく残り後半も頑張ろうな」
「うん!!」
良い返事をしているが、少し大丈夫だろうかと純哉は心配した。

 
ロケが全て終了して、トラシグの3人はバスに戻ってくると奏はニッコニコしていた。
慎が不思議そうに奏に訊いた。
「奏、疲れてないのか?結構体力を使ったと思うが……」
純哉はそれをきいてあ、と思い出した。奏は先程と同じく瞳を輝かせて慎にスマートフォンを見せた。
「今日はね!いい肉の日なんだ!」
「え、ああそういえばそうだな……それで……」
慎はよく分かってないようでもう一度訊いた。
「いい肉の日だよ!!!!嬉しいよね!!」
純哉はトントンと慎の肩を叩いてこっそり耳打ちをした。
「分かってんだろ、覚悟決めようぜ、慎」
そういうと慎は頷き、純哉はため息をこぼして奏にいった。

「今日は帰りに3人で肉をたくさん食べにいこうな」
奏はこの日一番の笑顔で思いっきり飛び跳ねて、バスの天井に頭をぶつけてしまい慎も純哉も笑ってしまったのだった。



20211129




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