猫の歩み【蘭マサ】




※付き合ってない。狩屋2年、霧野3年の霧野が部活引退した後の話。





好きだと思ったら目も合わせられなくなって、そのまま部活を引退されてしまい接点がグッと減ってしまった。
会おうと思えば同じ学校なんだし会えるだろう。だけど、会いたいと思っても足は向かないのだ。好きだからだと思う。
センパイのことが好きだから、拒絶されたら怖い。今までそんなこと思ったこともなかったのにいざ意識したら嫌だ嫌だと心がますます閉ざしてしまう。
「ーーーーだから会わないようにしてたんですよ」
「ん?何の話だ」
霧野がしゃがんで子猫の喉をゴロゴロと触っている。人懐っこいからか初対面なのに嫌がる素振りがない。羨ましい限りだ。
「…………猫の話です。あまり可愛がったらここにずっときてしまいますし、世話できるわけでもないんだから、ただ見守ってるだけだったんです。それなのにセンパイときたら」
霧野は手を止めて、触るのをやめた。可愛いと簡単に手にしてはいけない。可愛いといっているものには命があるのだから。
「すまん、狩屋はちゃんと考えて距離を作るんだな」
「ま、そりゃあ考えますよ」
「だからオレとも距離を取ったんだな」
霧野は立ち上がって狩屋を見つめた。狩屋は目を逸らそうとしたが、逸らせない。真っ直ぐに自分を見てくれている瞳がすごく、すごく欲しかったものだった。
「な、センパイなにいって…………」
そのまま狩屋は一歩足を引いた。
すると霧野は一歩歩み寄る。
「オレはお前と話したかったぞ。部活を引退したあとだって」
もう一歩霧野は歩み寄る。狩屋は動けなかった。動いたら泣きそうだからだ。
「だから話そう、狩屋。ここでのら猫を見守りながらでもいい。そんな時間をオレにくれないか?」
何も言えないほど、胸が熱くなってドキドキとうるさい。ああもう全部言いたくなるのに、言葉に出来ない。でもオレも伝えたい。話したい。
 
狩屋はバレないようにゆっくりと小さく深呼吸して一歩前に出る。
「せ、センパイがそういうなら……まあいいですけど?」
見つめられた瞳から逸らして出た返事に霧野は嬉しそうな笑い声が漏れたのだった。
 



20211124




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