星は眠る【基緑】








「忘れちゃったな」
緑川に言われてそう答えるとひどく傷付いた顔をされた。忘れてしまったというより抜け落ちてしまったのだ。きっと彼はオレだったのだろうけど、オレはもう彼がどう思ったかなんて覚えていない。
流れる星は地面に辿り着く前に燃えて何も残らないように、オレの中にはグランはいないのだ。
「ヒロトって、そういうところあるよね」
緑川はため息をこぼして、オレと同じように星を眺めている。寒くなってきた方がより星が綺麗に見える気がする。少し近づこうとすると緑川の手にぶつかった。
「あっ……」
オレはそのまま緑川の手を握ると、緑川も握り返した。
「オレは忘れてしまっても今のオレに満足しているけれどね」
目に見えている星は綺麗で、見えない星は綺麗かすらも分からないのだ。
それと同じなんだよと、過去の自分であるグランのことは再び記憶の奥へと眠りにつかせたのだった。




20211118




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テーマ「人外ファンタジー」
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