満たして【蘭拓】




※めっちゃ付き合ってる!



付き合い始めてからずっと右往左往している神童が可愛いけれど、自分がそのことを笑っていられなかった。
「霧野、キスしたい」
「ん、分かった」
いつも周りから頼られてその期待に答えている立派な姿を知っているからこそ自分にだけ甘えられているんだと思うとたまらなく愛しい。
それだけで満たされるはずなのにもっと欲しいと心の隅にいる欲望は手を出そうとする。
そっと1秒程の触れ合うだけのキスをする。ここは神童の部屋でオレたち以外には誰もいないし、もっと長く濃いキスをしてもいいだろうし舌を絡ませてもいい。
けれど、オレにはできなかった。そんないきなりやったら嫌われてしまうのではないかとか、してしまったら自分を止められる自信がなかった。
神童のことを、恋人を大事にしたいから慎重になる。情けないながらも自分は自分にあまり自信がないから。
神童は頬を少し染めながら、キスをした唇に人差し指をあてている。嬉しい感じに見えるし少し寂しくも見えてしまう。
「神童?…………やっぱりその、嫌か?」
霧野がいうと神童はすぐにブンブンと首を振った。
「ううん、大丈夫だ」
「大丈夫な感じには見えないな……。神童、オレに嫌なことやしてほしいことあればなんでもいってくれ。出来る限り頑張るからさ」
神童の瞳をスッと見据えて霧野は言った。
考えても神童のこと全ては分からないし、だから神童の話を聞く。これまでと同じオレたちだ。
「ーーーーじゃあ、もう一度キスして」
「わ、分かった」
霧野が顔をゆっくりと近づけると、待っていたはずの神童が急にぐいっと顔近づけて唇と唇がぶつかった。
「んぐ?!し、神童!?」
唇はすぐに離れてしまったが、神童は再びキスをしようと霧野を押し倒した。その顔は悔しそうな泣きそうな顔をしていた。
「オレは、もっと霧野とキスしたいし霧野からもそう思われたい」
苦しそうな表情にゾクリとした。今までで経験したことのない気持ちが疼いていく。
ああ、もっとこの顔をオレで満たしてあげたい。
霧野は神童の背中に手を回して抱き締めて、キスをする。先程のキスとは違うオレもしたかったキスを神童に浴びせたのだった。



20211117




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