噂の彼女【蘭マサ】




※付き合ってます



「霧野先輩って、彼女いるんでしょ?」
同じ美化委員のクラスメイトの女子に、花壇の水やりをしている最中、そう訊かれてどう答えたらいいか一瞬戸惑った。
「んーー………そうなんだ?」
狩屋はきいてきた相手に同じように訊き返した。その女子ははあーつまんないと呟いた。
「同じ部活の先輩なのになんにも知らないんだね。女子の間じゃ最近ずっと噂だよ?」
そんなことを言われても正直に言えるわけがないのだ。正確には恋人がいるのは確かである。しかし、こんな大して仲良くもない口が軽そうな女子に言う義理は全くない。
その女子はきいてもいないのに、噂のことを教えてくれました。
「あのね、先週の駅で彼女らしき人と霧野先輩が手を繋ぐのをみたんだって。目撃した子は霧野先輩のファンだったらしく、霧野先輩に詳しくて姉妹とかもいないはずだから絶対そう!って。どこの子か躍起になって探しているらしいよ」

美化委員の仕事を終え、その女子とは別れたあとその場にしゃがんで盛大に反省した。
目撃されたのは狩屋自身だった。周りに見つかってとやかく言われたら面倒だからと少し変装めいた感じにして失敗だった。
「狩屋?そんなところでなにしてるんだよ。もしかして具合悪いのか」
頭の上から降ってくる声にドキンと胸が跳ねた。
見上げると心配そうな顔をした霧野センパイがいた。狩屋は頬を膨らませながら、その顔をじっと見て大きくため息を落とした。
「おいおま、人の顔見てため息とか……」
「いや、なんでオレより断然女子に見えるセンパイが間違われなかったのかって……落ち込んでるんですよ」
そう言うと、センパイはオレと同じようにしゃがんで両頬を片手で掴まれた。
「フガ?!は、ちょ、センパ……」 
「そんなのお前がオレより可愛いからだろ」
全く悪気がなさそうに笑うセンパイをみて余計に頬を膨らませたのだった。



20211105




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