唇からの方が素直【勇圭】




※付き合ってない。



口ずさんでいるのは新曲のフレーズらしかった。
「もう出来たの?新しい曲」
「ーーいや、たまたま浮かんできたから口ずさんだだけだ」
鳴らしていたギターを止めて、隣にいるオレの顔をじっと見つめた。
「な、なんだよ」
そう返したのに何も返事をせずにただじっと見つめている。一瞬や喋っているならともかく黙ったまま見つめられているとこっちの方が恥ずかしくなって顔を反対へ向けた。
「チッ目を逸らすなよ…………」
勇人はオレの顔の輪郭を両手に掴んでグイッと自分の方へと向きを変えさせた。そのまままた黙ってじっと顔をよく見られる。
絶対勇人にだって伝わってしまうほど、頬というか顔全体が熱くて非常にまずい。
「ゆ、勇人、もういいかな……?オレの顔が良いのは分かるがそうじっと見つめられて観察されるとちょっと……」
勇人に掴んでいる手に触れた。すると、思ったよりもパッとすぐに手を離した。
なんだかそれはそれで寂しい気もするがとりあえずは離してくれて良かった。このままじゃ汗までかいてしまいそうなくらい、熱くて心臓も耐えられそうになかったから。
「ーーお前の顔をみているとさ、」
勇人は何事もなかったのようにもう一度ギターを手にとった。
「なんか、いい歌詞浮かぶスイッチみたいでつい見てしまうんだよな」
先程よりも少し違ったコードを弾き始めた。さっきの静かに染み渡っていた感じから直接胸にくるような重みのあるものに変わっている。
「だからってな………それってどんな歌詞だよ」
オレがきくと、勇人は言おうとして口を開くがまた舌打ちをした。
「ーーお前みたいな歌詞だ」
「ハア?よくわからな……」
勇人は浮かんだようで、口ずさんだ。
唇から放たれるのは、熱のある愛の言葉だった。



20211103




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