消える冷たさ【基緑】



※無印世界線ですが、いろいろ混ざって付き合ってる。
お題「冷たい左手」



 
 
緑川の手が冷たくて振り払ってしまい、しまったと思ったのにオレはその手をもう一度取ろうとしなかった。
「グラン様……」
きっと傷付けたと緑川をみると、そこには怯えた顔をしたレーゼがへたり込んでいた。
ああ、彼はレーゼだ。オレはジェネシスのグランで明確な上下関係がある。そんなこと関係なかったはずなのに、友だちだったはずなのに、オレは自分が怖くなってその場を去ってしまった。


***
ザーーッと雨の音が耳に入ってくる。大きなベッドの触り心地にホッとした。薄暗い部屋に強く降っている雨の音は心に響く。
あの日から随分経った。オレは左手を天井に挙げて見つめていた。彼の手は今もまだ冷たいのだろうか。それとも冷たかったのはオレの手ではないだろうか。
「ヒロト?起きたの?」
緑川が顔を覗かせた。隣にいなかったから先に起きたのだとは思っていた。
「……緑川、手に触れてくれないか」
「こう?」
緑川は何も疑わずに手を握った。雨の音が一瞬聞こえなくなった。
「ーーーーありがとう、側にいてくれて」
ヒロトはその手を握り締めて胸に当てた。静かに響く雨の音が心地よくなっていた。




20211101




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