いて欲しい人【蘭マサ】



※付き合ってるし同棲してる



手を擦り合わせたり、手をポケットに突っ込んだり、冬が近いなあと狩屋は家へと急ぐ足を速めた。
そうだ、センパイから連絡があったと急に立ち止まってスマートフォンをポケットから取り出そうとすると、後ろからザザッという同じように急に立ち止まる音が聞こえた。すぐ後ろに人の気配が感じた。
狩屋は一瞬身体が固まり、嫌なことをよぎったがそんなわけないとスマートフォンを見つめた。タップしようと指を動かすか悴んだのか、それとも今の奇妙なことのせいか。
ドクドクと心臓の音がよく聞こえる。いや、いっそ後ろを振り返ろうと決めてバッと振り返るとそこには誰もいなかった。
「か、勘違いか……」
はあと大きくため息をしてスマートフォンに目をすると、今きた通知はセンパイからだ。
《うしろみて》
「え、は?」
狩屋がもう一度振り返るとそこにはセンパイが笑って夜空を指差していた。
「今日はいい満月で明るいな!」
「はーーーーーー?!!?」
狩屋は叫び、混乱して頭を抱えた。
いやいや、そんなのありかよ?というかさっきまでいなかったはずなのに、おかしい。タッタッタッとセンパイが駆け寄って、オレの頭を撫でた。
「大丈夫か?なんか疲れてる?」
すごく心配そうな声してるが、こっちはさっきまであった恐怖を吹き飛ばされて次に怒りが沸いてきたが、もう怒っても仕方ないことは長年の付き合いで分かっている。
「急にうしろみてって連絡するからですよ……」
「えーーオレ今日早く帰宅できそうだから時間合うなら一緒に帰ろうと連絡したじゃん。なのに狩屋、返信くれないしと思ってたら目の前にいて声かけようと思ったら早足になるし……」
言われてから連絡をよくみると確かにそんな連絡が入っていた。
「だからって後ろ見てとか声かけるなら立ち止まったときに声かけるとか……」
狩屋が言うとセンパイは首を傾げた。
「オレは立ち止まっていた狩屋を見つけて連絡したんだぞ?」
「え、それって……」
肌を冷たい風が横切った。やっぱり今日は特別寒い。
「……センパイ、できたら手を繋いでもいいですか」
「ああ、いいよ」
そっと繋いでくれた手は冷たくなっていたオレの手には本当に心地よかった。



20211029




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