触れたから知られたくない【奏純】



※思いっきり付き合ってる
お題「愛してるって言ってほしい」




出会った頃から何度もきいてきた「愛してるぜ!」は、肌と肌がふれあってお互いの奥の奥まで求めていたところには響かなくなっている。
ドラマでみたことある《本当に私だけが好きなの?》と疑ってしまうような気持ちになる。だから二人でいるときは、純哉くんより多く「愛してる」と伝えたいのだ。
「そんなに言わなくても伝わってるから」
汗が頬を流れている純哉は穏やかに微笑んで奏の頬へと手を伸ばした。奏はその手を上から重ねて触る。不安がないわけではない、きっと純哉もそうなのだ。
お互いに後ろめたさを感じている。でも止められなかったからこうして汗が混ざり合うのだ。
「分かってる……でもオレが伝えたいんだ」
オレが愛してるって何度も言いたいのは純哉くんなんだって。
出そうになった言葉は喉元で留まった。衝動的にこんなことをしているオレにははっきりとは言えない。ただ理由をぼかしててでも言いたい。
「愛してるよ。純哉くん」
暗いオレンジの電灯に照らされている純哉もどこまでも愛したかった。



20211022




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